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PRパーソンのキャリア確立法

アナウンサー、報道記者を経て国連広報官へ 

根本かおる(国際連合広報センター 所長)

アナウンサー、報道記者を経て留学中に国連に出会い、その世界に飛び込んだ国際連合広報センター所長の根本かおるさん。メディア、広報という専門スキルと何かを伝えたいという情熱を持つことで、そのキャリアが切り拓かれている。

イベントでは、番組づくりのような企画力が求められる
「性差別による暴力廃絶活動の16日間」キャンペーンの一環として、2013年11月、国連の3機関による特別映画上映会を開催した。パブリック・アウトリーチ的なイベントには、「企画力」が必要になる。

記者と国連の経験を融合

昨年の8月に国連広報センターの所長に就任して以来、日本の皆さんへ国連の活動に対する関心や理解を高めてもらおうと幅広い活動を行っています。仕事のキャリアは1986年にアナウンサーとして入社したテレビ朝日がスタートです。アナウンサーを3年、報道記者を5年経験した後、専門分野を身につけたいと思い、休職してコロンビア大学大学院に留学しました。「国際人権・人道問題」をテーマに選んだこともあり、留学中から国連の活動に興味を持ち、大学院を出た後は国連難民高等弁務官(UNHCR)事務所に在籍。トルコ、ブルンジ、コソボ、ジュネーブと様々な地域で働きました。

広報の仕事との出会いは、2004年から2年間、世界食糧計画(WFP)日本事務所広報官の仕事を経験したことです。それまで、UNCHRで世界中を飛び回っていて家族とは別居状態でした。日本に腰を据えて仕事がしてみたいと思っていた時、募集を知って応募しました。今のポジションも、11年末に国連を一旦離れフリージャーナリストとして活動していた時、偶然知ったものです。メディアでの経験と国連でのキャリアを融合できるとてもやりがいのある仕事かもしれないと思って応募し、試験を経て採用されました。

国連は世界各国が分担金を拠出して成り立っているものです。いわば世界全体の共通財産なのですが、私たちは軍隊を持って活動しているわけではありませんので、信頼や尊敬といったソフト面に対する世界からの支持があってはじめて効果的な活動を行えます。説明責任という意味でも、継続して「伝える」ことが重要です。

国連の広報を実際にやってみて感じるのは、この仕事はとても専門性が要求されるものだということです。メディアとはどういう習性を持っていてどういうリアクションをとるのか、熟知しないと成果を挙げることができません。彼らのニーズの裏の裏まで知り尽くした上で活動を行う必要があります。またメディアに対しての活動だけでなく、国連の課題について皆さんと一緒に考えるイベントやシンポジウムなどを行うパブリックアウトリーチ的なものも手がけています。それらはいわゆるジャーナリスティックな広報活動とは違い、企画力が必要となってくる分野になります。

国連の活動や価値はグローバルなものとして存在しますが、それをいかに日本というローカルマーケットへ向けてメッセージングするか。メディアへの感度とプロデュース力がとても重要です。ニューヨーク本部から様々な指令が届きますが、それらをそのまま訳してメディアへ向けて流したり、イベントを考えるということはありません。どのように伝えれば日本の皆さんへ現在世界で起こっていることが自分たちのこととして考えてもらえるか、その文脈づくりにかなりの労力を使います。

例えば今年3月8日の「国際女性の日」に、私たちはイベントとウェブサイトを中心としたキャンペーンを行いました。その中で旧ユーゴの紛争中に起こった性暴力についてのドキュメンタリーを上映し議論する場を設けたのですが、大学教授や外務省の代表に加え新聞社の編集委員にもパネリストとして参加してもらいました。国際レベルの話を専門家だけで議論するとどうしても身近に感じられませんので、編集委員の方には、このことを今の日本の女性たちがいかに日本社会に結びつけて考えればいいかを語っていただいたんです。結果、とても得心できる議論にすることができました。オンラインのキャンペーンでは、日本にある国連機関事務所の8人の女性代表に登場してもらうインタビューシリーズを行いました。それぞれにどういう経緯を経て今に至っているか、またワークライフバランスを保つための工夫などを語ってもらい、多くの方に関心を持っていただくことができました。

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