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パブリックリレーションズの未来

四川大震災を経て開眼。CSR通じて地域共生目指すアディダス中国

社会とのより良い関係を築く「パブリックリレーションズ」。その領域は単に発信にとどまらず、あらゆる企業活動・社会活動と結びついて広がっていく。メディア対応もそのひとつ。経営視点を持ちながら行動できる広報部、広報パーソンが求められるといえる時代がすぐそこまで来ている。

アディダス中国は、2010年からCSRの一環でスポーツゲームを通じた子どもたちへの教育支援を行っている。08年に発生した四川大地震を受けた避難訓練としてスタートした活動は、その範囲を年々拡大しており、プログラムを受けた子どもは7000人に上る。社員たちもトレーニングを受け、ボランティアとして参加している。

何より重視するのは透明性

「スポーツへの情熱を通じて世界をより良い場所にする」をビジョンに掲げるアディダスグループ。アディダス中国でコーポレートコミュニケーション部を統括するサブリナ・チャン氏はマーケティングの経験が長かったが、企業広報はとても面白いと話す。「マーケティングやブランド担当者は、“voice of brand(ブランドの代弁者)”ですが、企業広報は“voice of company(会社の代弁者)”。企業として目指す方向性はどのようなものか。どのような文化や良識を持つ企業なのか。こういったメッセージを伝え続けることは、ビジネスを支援する意味でもとても重要です」。

コーポレートコミュニケーション部門は5人で、メディアリレーションズ、IR、ガバメントリレーションズ、社内広報、CSR活動を担う。「重視しているのは透明性です。透明性を確保しつつ、メディアを通じて企業情報や業績をいかに伝えていくか。その結果、いかに企業のレピュテーション(評判)を高めるかが課題です」。

チャン氏が現職に就いたのは10年のこと。前年のリーマン・ショック以降、世界的な経済危機の影響はアディダスの売上にも表れていた。そのため、就任直後のチャン氏の役割は、メディアをはじめとするステークホルダーに、リカバリープランを丁寧に説明することだった。「アディダス店舗の多くはフランチャイズ。以前は商品を納品するだけでしたが、10年以降は店舗ごとの来店者データを分析し、どの店舗でどの商品を売るか、綿密な計画と流通の仕組みをつくりました。このプランが成功し、今では売上が回復しつつあり、ステークホルダーの皆さんにも理解を得ることができました」。

12年には、300ある中国の工場のうち、1つを閉鎖すると発表したところ、あたかも中国から撤退するかのような記事が掲載されたことがあった。「1つのメディアに誤った報道をされると、それがコピー&ペーストされてあっという間に世界中に広まってしまうことがあります。この時には誤報をしたメディアにすぐに説明し、声明も出し、引き続き中国市場にコミットしていくことを伝えました」。

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