メッセージの影響力を実感
いま、広報の仕事を続けているのは、さまざまな経験と、「伝わった」という成功体験の積み重ねによるところが大きい、とスイス大使館の栃林直子氏は話す。大学卒業後はハーゲンダッツなど複数の食品輸入関連のマーケティングや営業の仕事を経験した。「5歳までドイツ、小中学校は米国で育ちました。そうした経験から、海外で身近にあったいいものを日本に紹介したいという思いもあり、マーケティングやブランディングの仕事を希望していました」。
MBAを取得した後、あえてビジネスではなく、2005年から5年間、国連大学の広報という新たな仕事にチャレンジしたのは、その直前にコミュニケーションのコンサルティング会社に勤務し、東京モーターショーのプレス事務局などを経験し、広報の仕事に関心を持ったことがきっかけだった。国連大学や複数の国連機関で広報を担当することで、国や国連機関を代表する人たちが社会に向けて発信するメッセージの影響力を体感した。「どのような記事になれば、彼らのメッセージが伝わるのか。そこに至るまでの段取りを整えるのが私の仕事。その重要性を感じるようになりました」。記事で採用されたちょっとした言葉が、「あの時、記者と話したキーワードだ」と発見するのも嬉しかった。
広報の仕事はスポットライトを当てるようなもの、と栃林氏は例える。商品に、人に、どの角度でスポットライトを当てた時、一番輝くのか。その角度を予測し、実現するのが広報。イメージ通りにスポットライトが当たり、商品や人、メッセージが輝くことにやりがいを感じるようになった。