広報のマインド、スキルを持ち、さまざまな組織や分野で活躍するPRパーソンたち。そのエキスパートたちに、広報にはどのような役割と価値があり、キャリアを築いた人にこれから求められることは何かを聞いた。

土井氏は広報を(1)顧客、(2)地域社会、(3)株主、(4)事業パートナー、(5)従業員といった全てのステークホルダーとの間で、経営のビジョン、会社の方向性をキャッチボールすることだと話す。
広報の役割とは?
社会とのキャッチボール
広報とは、(1)顧客、(2)地域社会、(3)株主、(4)サプライヤーなどの事業パートナー、(5)従業員といった全てのステークホルダーとの間で、経営のビジョンを常にキャッチボールすることである。元トヨタ自動車広報担当部長でクレアブ・ギャビン・アンダーソン副社長の土井正己氏は、広報をそのように定義し、時にはそこで受けた球を社内にフィードバックする役割があると話す。
広報担当者は、それぞれのステークホルダーに向けて少しずつ表現方法を変えながら経営方針を説明する。すると、広報が投げた球に対するさまざまな反応が新聞や雑誌といったメディアを通して返ってくる。そこで、その反応に対する答えをさらに投げ返す。広告宣伝の一方通行の情報提供とは異なり、広報には双方向性がある。そうやってキャッチボールを繰り返し、ステークホルダーとのコミュニケーションがうまくいけば、会社は間違いなく良い方向にむかう。
キャッチボールをしていると、当然社会から“痛い球”が飛んでくることもある。それらも、嫌がらずに真摯に向き合い冷静に判断しなければならない、と土井氏は言う。ネガティブな返球には(1)情報不足によるもの、(2)誤解によるもの、(3)全部理解したうえで問題を指摘しているものという3つのパターンがある。(1)と(2)の場合は、キャッチボールを続けることで理解が深まれば解決に向かうことが多い。他方、注意しなければならないのは(3)の場合で、「そのとおりだ」と納得できる意見が返ってきた時はトップに進言しなければならない。「広報は『党内野党』です。必要があれば、社会からの厳しい意見をトップに進言する。トップがその通りだと思えば、会社が新たな方向に変わり始めます。広報が会社を変えることもある。まさに、経営機能と直結しているのです」。