クラフトビール大手のヤッホーブルーイング(長野・軽井沢町)は、4月にオンライン飲み会を開催し、2000人が参加した。オンラインでもファンを虜にするプロモーション戦略を聞いた。

ヤッホーブルーイング
代表取締役社長
井手 直行(いで・なおゆき)氏
福岡県出身。1997年ヤッホーブルーイング創業時に営業担当として入社。2004年楽天市場担当としてネット業務を推進。看板製品「よなよなエール」を武器に業績をV字回復させた。2008年から現職。現在15年連続増収増益、全国400社以上あるクラフトビールメーカーの中でシェアトップ。
家庭用が好調でリスクが分散
──飲食店の休業がビール市場全体に与えた影響は大きいですが、“宅飲み”需要は増えています。足元の状況は。
部門ごとで好調・不調と極端に分かれていますが、まず不調部門は、言わずもがな業務用です。都内に8店舗展開している公式ビアレストラン「YONA YONA BEER WORKS」(ワンダーテーブルが運営)は、営業時間の短縮やテイクアウト実施の対応をとっています。そのためビールの消費がほぼゼロ。他の飲食店からの注文もほぼありません。また、本社のある軽井沢は缶製品の一大消費地でしたが、観光客や別荘所有者が大幅に減少。4月の売上は前年同月比で20%に留まりました。
好調なのは、家庭用である流通・小売向けと通販部門です。4月の出荷量は前年同月比でそれぞれ180%と200%となりました。そのためトータルで見ると大幅なプラスで、2020年4月の月間売上は、創業以来過去最高を記録しました。
通販では、サブスクリプションモデルの「ひらけ!よなよな月の生活」が好調です。最も安価な「2カ月毎に24缶コース」で年間3万9720円(税込)のサービスです。お届けするビールは8種類以上から自由に選べる仕組みですが、一部の生産が追い付かず新規申し込みを一時ストップしたほどでした。
──クラフトビール業界は、「醸造所+飲食店」のビジネスモデルをとる企業が多い中、手を広げていたことで好調部門も生まれました。
そうですね。今回の新型コロナウイルスの経験で、中小企業においても、単一のビジネスモデルに固執せず、ポートフォリオを広げておくことが重要だと強く感じました。
当社の場合、家庭での消費を強化して缶製品を販売していましたし、店頭で売れなくなった厳しい時代を経て、ECサイトでの販売にも乗り出していました。その結果、リスクが分散した形となって良かったです。やはりいざというときに、スムーズに重心を移行できるような組織を構築しておくことが大切ですね。
──家庭用販売では、新規顧客の取り込みにもつながっていますか。
当社のメインターゲットは30歳~40歳代です。まだ購入者のデータ分析はできていない段階ですが、初めて私たちのビールを手にとってくれた方が圧倒的に増えている印象がありますので、購買層にも広がりが出ているかもしれません...