ECなどダイレクトチャネルが広がるなか、店舗のあり方は今後どう変わるのか。近年は営業時間の短縮や無人化など変革に迫られていたコンビニ業界を例に、店頭における販促活動の今後について各社の方針とともに考えてみたい。
感染拡大による緊急事態宣言は、人々の購買行動に大きな変化をもたらした。消費者の最も身近な場所に店を構えて、社会のインフラ、生活のライフラインを担うコンビニも、24時間営業を続けて、人々の期待に応えている。
4月の既存店売上高は厳しい状況に
まずは営業状況を見てみよう。4月の既存店前年比だが、これだけ悪化した数値は筆者にも記憶がない。業界の優等生であるセブン-イレブンは、客数14.7%減、客単価11.4%増、売上高5.0%減。客数が大幅に減少したが、まとめ買いで押し上げるものの厳しい結果となった。
ファミリーマートは、客数22.2%減、客単価9.3%増、売上高14.8%減に着地した。渋谷スクランブル交差点の閑散とした状況が度々テレビに映し出されてきたが、その周辺に大量に出店しているのがファミマである。23区の繁華街やオフィス立地に集中出店したコンビニ「am/pm」を統合したファミマは首都圏に強い。その売上が大幅に落ち込み足を引っ張った。
セブン&アイ・ホールディングスが公表した各事業会社における3月度の既存店売上高前年比だが、セブン-イレブン(・ジャパン)が96.8%、うち前半(3月1~15日)が96.5%、後半(3月16~31日)が97.1%と推移した。
「生活必需品中心のコンビニは、非常時の影響が少ない業態であるが、セブン-イレブンは、オフィス立地や行楽立地、駅前立地を中心に客数減の影響があった。一方で住宅立地の売上は伸長している」(セブン&アイ・ホールディングス代表取締役社長 井阪隆一氏)。大手企業の一部が既に3月に在宅勤務に切り替えを始めて“近くて便利”がオフィスや駅前から住宅立地にシフトした結果であろう。
イトーヨーカドーは食品売場に限れば3月度107.5%と売上を伸ばすものの、衣料品や住居品を含む全体では94.7%と苦戦した。「大型店に対しては人混みを回避する消費者心理が働いた」(井阪氏)。百貨店のそごう・西武は同66.6%、デニーズを主力とする外食業のセブン&アイ・フードシステムズも同74.1%と非常に厳しい数字となった。反対に、食品スーパー専門のヨークベニマルは、まとめ買いニーズなどもあり、同103.9%と大きく売上を伸ばしている。

「近くて便利」が店舗コンセプト
セブン-イレブンは2011年に店舗コンセプトを「開いててよかった」から「近くて便利」に変更した。長時間営業の利便性だけでなく、顧客に寄り添う心理的な近さを目指したものだ。
「ワンストップショッピング」志向で対策
一般にコンビニは地震や台風など自然災害時に客数が急増する。人々が難を逃れ、当面の生活必需品を大量に購入する。東日本大震災時には首都圏のコンビニで、おにぎりやパン、カップ麺、ミネラルウォーターなどが1週間にわたって品薄状態となった。だが今回のコロナ禍にそのような特需はなかった。ミニストップ代表取締役社長の藤本明裕氏は次のように分析している。
「自然災害時にコンビニやスーパーマーケットにお客さまが殺到する状況が過去にあった。しかし今回(のコロナ禍)は時間的な余裕があり、準備期間があるので、より低価格で、買いだめができる店舗を選んでいる。イオングループであれば、(ディスカウントスーパーの)アコレ、(ミニスーパーの)まいばすけっと、といった小型店で買い物をしている。コンビニでも住宅エリアで、そうした需要に応えているものの、オフィスエリアやイベントエリア、観光地などで売上が半分以下になる店舗もあり全体としては弱含みの状況」。
ただし、ミニストップでも手を打っていないわけではない。店舗によっては、ティッシュやトイレットペーパーなどの紙製品、安価でボリュームのある100円菓子、ミネラルウォーター(2リットル)などの特設コーナーをつくり、価格も含めてスーパーマーケットやドラッグストアと“対抗”し、買い回りしなくても1カ所で生活必需品がそろう「ワンストップショッピング」を志向している。
またローソンも積極的な動きを見せている。不要不急の外出自粛要請、感染リスクが長期化する恐れ、その反動による自粛疲れによる癒し消費、さらに収入の減少といった要因を分析して品揃えの変更に、いち早く取り組んでいる。ローソン代表取締役社長の竹増貞信氏は次のような対策を講じた...