アドビの「Digital Publishing Suite(DPS)」を使ってアプリを作成する企業を募集する「DPSモニタープロジェクト」。これまで、募集告知から、アプリ作成企業の決定、そして作成したアプリの紹介と、約半年間、合計3回にわたってレポートしてきた。今回は、三菱UFJニコスの海外優待ガイドアプリ「トラベルガイドアプリ」がリリースされて、約1カ月が経過したところで実感している効果や今後に向けての動きについてレポートする。
三菱UFJニコス EC推進企画部 調査役 藤井正行氏
リリース1カ月で約800DL
コスト換算で25万円の効果!
トラベルガイドアプリのリリース日は9月1日、それから約1カ月で約800件がダウンロード(以下DL)された。三菱UFJニコス EC推進企画部 調査役 藤井正行氏は「DLの目安としたのは、昨年9月の『ふらっと・ぷらっと』ハワイ版の資料請求件数である1200件。当初、600件くらい行けば、と考えていたので、スタートとしては順調」と話す。今年9月の紙版の資料請求件数は200件だったことから、この800件というのは紙からアプリに置き換わり、送付などのコスト負担なく、情報を届けられたという見方もできそうだ。
アプリには、「ふらっと・ぷらっと」ハワイ版の優待ガイドだけでなく、海外旅行の「トラベルガイド」も含まれている。これまでこの二つを別に発送していたので、それがアプリに統合されただけでも大幅にコストが削減された。「800件をこれまでと同様に届けるとなると、発送費および諸経費で合計約25万円かかる。これが毎月積み重なると大きい」と藤井氏は話す。
現在アプリの利用促進のために行っているのがウェブサイトとメールマガジンによる告知。サイトではカードのメリットとサービスの一つとして、アプリの内容を紹介している。「今後、『ふらっと・ぷらっと』の資料請求ページにもアプリの告知を掲出したい。紙の資料を請求する前に、“スマホを持っていればアプリを今すぐDLできます”と伝えることで、顧客に利便性を提供しつつ、コストも減らすことができる」。メールマガジンについては、9月18日に一部のメルマガ会員向けに、アプリのリリース情報を掲出したメールを配信したところ、DLに結び付いた。それを受け、11月には対象会員を拡大しメールを配信する予定だ。「今後は、最も資料請求の多い時期である来年の2月~6月に向けて、さらに利用を促していきたい」
また、プロジェクトスタート時にDPSに期待することとして挙げた「アプリの利用者動向を分析して、有効なコンテンツが何かを見つける」について藤井氏は「まだリリースして1カ月なので、詳細なところまでは分かっていない。ただ、これまでどの情報が見られていたのかが全く分からなかったことと比べると、傾向が見えると次の施策が考えやすくなる」と話す。
「トラベルガイド」アプリ
カード利用者が海外旅行の際に受けられる優待のガイドブック「ふらっと・ぷらっと」をアプリ化。旅行前の情報や、飲食店や観光スポットを紹介する地図、割引やプレゼントなどの優待の受けられる店舗の情報がまとめられている。
ほかの冊子や会員誌のアプリ化
会社全体として紙コスト見直しへ
最後に今回のプロジェクト全体を通じ、DPSによるアプリ化のメリットを聞いた。まず挙がったのが「圧倒的なスピード感」。「製作期間のみならず、その後の変更・更新も含めてスピード感が全く違った。例えば、紙の場合、ちょっとした変更であっても、訂正の案内紙を作成するのに約1カ月かかってしまう。しかし、先日記事の一部を変更したところ、わずか2日で完了することができた。このスピード感で仕事が進むのはありがたい」と話す。
2点目として「ユーザーへの価値・利便性向上に集中できる環境」を挙げた。「先日iOS8にアップデートされたが、自社開発アプリの場合、こうしたプラットフォーム側の変更にすべて自社で対応しなければならず、大きな負担になる。しかしDPSならば、そうした対応についてはお任せできるので、我々はユーザーにとってより魅力あるアプリ作りや発信する内容の企画部分に集中できる」。
最後に挙げたのが「コスト削減」。これは、「ふらっと・ぷらっと」の製作・発送コストだけではない。今回のことがきっかけとなり、すべての紙のツールについて“これは本当に紙である必要があるのか”ということを全社的に見直すことになったという。「例えば、社員に配布する社内報なども、アプリ化することで無駄がなくなるのではないか」と藤井氏は指摘する。
今回の取り組みの手応えから、同社はDPSの継続利用を検討し、来年3月までにさらにもう1都市の優待ガイドのアプリ化を進めていく。
ウェブサイトの「メリット&サービス」に「トラベルガイド」アプリの告知を掲出し、利用を促す。このほか、メルマガなどでも告知している。
DPSによるアプリ化の成果と今後 | |
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アプリのダウンロード数と告知 | リリース1カ月で約800件のDL。昨年同時期の紙の資料請求数は1200件。単にアプリに置き換わっただけでなく、新しい層にサービスをリーチできた効果も大きい。アプリの告知はウェブサイト、メルマガで実施。今後は、もともとある「請求額・ポイント残高」を確認できるアプリの中で告知して効率的に利用者を増やすことも視野に入れる。 |
製作期間とコスト | ベースとなる冊子があったことで、アプリ化まで約2カ月と大幅に製作期間が短縮。アプリ化によって紙の印刷、発送コストも大幅削減。DL数と同じ800件分のツールを印刷、発送したとすると、削減できたコストは約25万円にもなる。 |
製作後に見えてきたこと | 情報の更新があってもスピーディーかつ一気に変更をかけられる。またそうした更新内容をDLした人に対してプッシュ通知できるため、アプリ立ち上げの促進にもつながる。 |
今後に向けての取り組み | 年度内にもう1都市をアプリ化し、リリースする予定。また、優待ガイドのみならず、社内報など、社内のあらゆる紙ツールで無駄なものがないかを見直す活動につながっている。 |
お問い合せ
アプリ・モニターキャンペーン委員会(事務局:宣伝会議内)
TEL.03-6418-3331
E-mail.event@sendenkaigi.co.jp