ネットは見て、見られて、表現する場─つまり皆が参加する劇場のような場所だ。広報にはパブリシティ活動だけではなく、双方向のコミュニケーション体制が求められる。

図1 2016年 炎上のメカニズム
ネットは皆が参加する劇場、広報対応の主戦場はネットへ
ネットユーザーの声は善意か?不寛容社会の表れか?その行動は過激化するばかり。衝突、批判、炎上の光景がメディアのネタ元になり、ニュースとして発信されてしまう。企業の広報対応の主戦場は今や、ネットに移行しつつあるのかもしれない。
一昔前は真面目に受け止められることの少なかった「ネットの書き込み」が、今やリアルな世界でも大きな影響力を持つようになってきている。本稿では2016年に発生した「炎上」について、大きく3つのパターンに分類した。事例とともに整理したので、ご参照いただきたい。
いわゆる「炎上」のメカニズムも変わってきた。以下の図のとおり、広報の立場から一方的に組織の方針を伝えれば「ひとまず対応済み」と考えられていたものが、ネットの反響次第で追加対応を迫られるケースが増えてきており、常に目が離せなくなっている。対応自体のアップデートが求められている状態だ。
マスメディアもネットと切っても切れない関係を持つに至っている。「ネットで話題」となればマスメディアでも有力なコンテンツになり、多くの記者やライターが「ネットで注目されているもの」を探し、ネタにする。そしてマスメディア自体もまた、ネット上で注目され話題になることを意識したコンテンツを発信し、ネットユーザーもそれに反応する、という関係性が生まれている。
本人がそれぞれ意識するかどうかにかかわらず、ネットはまさに皆が参加する「劇場」と言えよう。大小様々なメディアが「事件」を報じ、その報道をきっかけにしてさらに多くの人たちが集まってくる。世間の注目度が上がると、「けしからん」と声を上げる人たちはヒートアップし、「仲間たち」と協力して攻撃の力を強めていく。
それぞれが持っている抗議先の電話番号や住所、コピペして使えるメール文をシェアし、集中攻撃をかける。ある日を境に急増したクレームに、窓口となった人たちは悲鳴を上げる。そうして組織は対応を取らざるを得なくなるという流れだ。こうした現象に対して漠然と「社会の不寛容」を嘆く声もあるが、ヒートアップする仕組みの理解なくして現実的な対策は取り得ない。
炎上パターン A
ネット上での発言に対するバックラッシュ
ネット上での失言やスキャンダルが「炎上」に留まらず、現実の世界の処遇・人事にも影響を及ぼした例

ベアーズ役員のブログ炎上、謝罪と降格処分(2~3月)
家事代行サービス・ベアーズ社の執行役員のブログに批判が集まり削除された。内容は、女性を合理性に欠ける意味不明な生き物としその扱い方を紹介するもの。当該役員は降格処分となり、ブログを削除した。

ショーンK、HP掲載の経歴詐称で活動自粛(3月)
経営コンサルタントで報道番組でも活躍していたショーン・マクアードル川上氏が、米国の大学での受講歴などを詐称していたと『週刊文春』が報じた。本人はラジオなどで謝罪し、活動を自粛した。

長谷川豊氏、ブログ炎上で降板(9月)
フリーアナウンサー・長谷川豊氏が、自身のブログに「自業自得の人工透析患者なんて …