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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

言語化すべきは勘の鋭いお客さまたちの直感

谷本理恵子氏(グローアップマーケティング)

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    ECサイトのテキストライティングの極意

    ☑ 他ではなくこれを選ばなくてはいけない理由を書く。

    ☑ 「今すぐ買う」以外の選択肢しか残さないようにする。

    ☑ 「既存のお客さま」に共通する「内面の前提条件」を解像度高く理解する。

「欲しい」を「今すぐ買う」にテキストにしかできない行動喚起

写真や動画など、文章よりも圧倒的に情報量の多いコンテンツで商品の魅力を訴求することができる今日でも、テキストライティングの力は侮れません。

文章やテキストと聞くだけで苦手意識を持つ方もいるかもしれませんが、「ぱっと見てわかるイメージ」ではないという意味では、「口頭で話す情報」と同じです。

例えば自分がすごく気に入っている商品を、誰かに会話の中で紹介したいといった時に、何の説明もなく動画や画像を見せただけでは、何がそんなに良いのかを伝え切れないと思いませんか。

つまり、「どうしても言葉でしか説明できない情報」というものが、存在するのです。

もちろん「世界観のある写真」や「使用イメージ」がすぐに浮かぶ動画などでぐっと興味を引き付け、一瞬で「欲しい」という感情をつくり出せることもあります。けれども、単に「欲しい」という気持ちになっただけで、今すぐ行動できるわけではありません。大きく気持ちが揺さぶられたとしても、実際に行動する前に「欲しい、けれど……」と立ち止まってしまうことが大半だからです。右脳的に「感情」が動いたとしても、次の瞬間には「本当に今ここで衝動買いして良いのだろうか」と左脳的に理詰めで考え始め、「やっぱり今は、お金がないから、時間がないから、使いこなせる自信がないから、やめておこう」などとブレーキを踏んでしまうと、せっかく「欲しい」という気持ちになったにもかかわらず、「買わない」という選択をしてしまいかねないのです。

しかし、その場で即決してもらえないなら、基本的に次のチャンスはありません。今や世界中から、あらゆる物を自宅に直接取り寄せられる時代です。ECという技術革新は、地理上の商圏に縛られる状態から、どんな場所でも自由に商売できる可能性を拓いてきました。逆に言えば、世界中のあらゆる店と戦わなければいけない状況なのです。数多くの競合他社が情報を発信し続けている環境の中、いったん離脱した見込み客に、偶然もう一度見つけてもらえるという保証はどこにもありません。だからこそ、この場で「今すぐ買う」という行動を取ってもらうための表現をとことん追求するのが、ECサイトに求められているテキストライティングだと言えるでしょう。

売るための文章に必要な「アクセル」と「ブレーキ」

売るための文章は、大きく分けると「今すぐ買うべき言い訳」を増やすための文章と、「買わない理由」を消し去るための文章の2つに分かれます。

例えて言うなら、車のアクセルとブレーキのようなものです。「欲しい」という感情をつくるだけでなく、論理的にも「納得できる」補足情報なしでは購入できないならば、サイトで見せるべき内容は、さらに買いたくなるような「アクセルを踏み込んでもらえる」情報だけでは十分ではありません。どれだけアクセルをベタ踏みしていても、それ以上にブレーキを踏んでいる状態では、車は前に進みません。つまり、強く踏み込んでしまっている「ブレーキを解除してもらうための情報」が必須になるのです。

アクセル的な要素として求められているのは、すでにある「欲しい」という感情を正当化し、自分で自分に「買っても良い」という許可を出せる「うまい言い訳」だと言えます。例えば、数量や期間を限定する手法はよく知られていますが、実は、どんな言い訳でも良いのです。もともと「欲しい」と思っているので、単に「それらしい理由」さえあれば、十分に行動のきっかけをつくることができます。どんなにくだらなくても、とにかく理由がありさえすれば、人は動きやすくなるものなのです。

一方、「ブレーキ的な要素」としては、最後のさいごに「やっぱりやめよう」と言われないように、すべての「買わない理由」を消し去ってしまうことが重要です。つまり、「今すぐ行動すべきではない理由」をなくすことで、読み終わったときには「今すぐ買う」以外の選択肢しか残さないようにするのです。

最も一般的な「買わない理由」には、「お金がない、時間がない、使いこなす自信がない」の3つがありますが、もちろん、他の事情もあるはずです。そのすべての「~がないから無理」を「実は、~はあるから、大丈夫」だと転換して、なぜ「ある」と"...

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