BtoB企業のコンテンツマーケティングの極意
☑買い手が欲するであろうコンテンツを作成、発信し、バイヤージャーニーを進める後押しをする。
☑ペルソナにとって、「自社だからこそ提供できる価値のある情報は何なのか」を見定めてコンテンツに落とし込む。
☑各施策がバイヤージャーニーでどのような役割を果たすべきなのかを見定め、その役割を果たせているかを測定するKPIを設定する。
BtoBのコンテンツマーケに“売れる文章”は存在しない!?
私はIT企業で営業職を約3年経験した後、「ferret」の立ち上げ時からライターとして参画し、副編集長を担当。その後、約2年間フリーランスとしてビジネス系メディアでの執筆、編集やオウンドメディア支援に従事し、2020年にHubSpotに入社。日本語ブログの編集長としてコンテンツ戦略の設計から、記事作成チームの管理、公開後の効果測定を担っています。長い間、今回のテーマである「BtoB企業のコンテンツマーケティングとテキストライティング」に携わってきたので、参考になる情報を提供できれば幸いです。
まず、前提を確認しましょう。BtoBの場合、“売れる文章”というのは存在しないと私は考えています。正確には、ひとりの人間がテキストをひとつやふたつ読んで、すぐ営業担当者に問い合わせて成約につながることは、ほぼないからです。BtoCの場合であれば、記事やLPを見た個人が「この商品が欲しいから買おう」と即決できますが。BtoBでは、何かの製品を導入する場合、まず必要な要件を社内で確認し、見積り・コンペを実施、決済時に複数人の承認が必要など、購買までの工程が複雑なケースが多く、営業担当者との商談を挟むのが一般的です。
それでは、商品を売るためにテキストは必要ないのかというと、決してそんなことはありません。買い手とのつながりを生み、信頼を得て、導入検討したうえで営業担当者と話したいと思ってもらうまでに購買プロセスを進めていくためには、テキストコンテンツの存在が不可欠です。
2012年にアメリカの調査会社であるCEB社が発表した「BtoB企業の担当者が事業会社に問い合わせした時点で、購買プロセスの60%を完了している」という調査結果は当時話題を呼びました。10年以上経った今でもその傾向は変わらないもしくは加速していると、多くのBtoBビジネスパーソンが実感しているところではないでしょうか。
従来は、展示会やセミナーに参加して企業の営業担当者から直接、話を聞かなければ製品に関する情報は取得しづらい状況でした。インターネットが普及し、検索すればあらゆる情報が取得できる現代では、自身で製品情報を収集してから問い合わせるのが一般的な購買行動です。
HubSpotでは、購買プロセスを3つに分類した「バイヤージャーニー」を採用しています【図】。これを基に考えてみると、買い手は①では自分自身で情報収集し、②がある程度進んだ段階で営業担当者に問い合わせます。「①と②のそれぞれの段階で買い手が欲するであろうコンテンツを作成、発信し、バイヤージャーニーを進める後押しをする。これがBtoB企業におけるコンテンツマーケティングの基本だと考えています。

図 バイヤージャーニー(買い手が購入に至るまでの過程)
自社と買い手のつながりを生む導線設計は人間にしかできない
ここまで読んで、「自社を知ってもらうためのコンテンツであれば、動画などテキスト以外の形式でも良いのでは?時代的には動画へのニーズが高まっている」と思われる方がいるかもしれません。買い手のニーズに応じてあらゆるコンテンツ形式でアプローチするのが理想的ですが、私としてはまずはテキストに取り掛かることをおすすめします。
ひとつ目の理由は、買い手側の決済プロセスの問題です。先述した通り、BtoBの場合は決済に複数人の承認を得なければいけないケースが多く、特に忙しい役職者に伝える場合は製品情報や事例、導入後のメリットが端的にまとまっている必要があります。その場合、すぐに目を通せるテキストは買い手にとって使い勝手が良い可能性が高いのです。
2つ目は、作成リソースを抑えられるという売り手側のメリットがあります。例えば動画の場合、カメラやマイクなどの機材の準備、台本や絵コンテの作成など、事前準備に一定のリソースが必要になりますよね。
このような理由から、テキストはBtoBビジネスにおいて非常に有効だと...