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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

テクニックだけではない! ダイレクトマーケティングのクリエイティブで大切なこと

松田 真治氏(博報堂ダイレクト)

    ダイレクトマーケティングの極意

  • テクニック以上に重要なのは、顧客の心理を理解し、顧客の納得度を高めること。
  • アナログとデジタルは別ものではなく、「アナログ&デジタル」で考える。
  • ダイレクトレスポンスでもブランドは無関係ではなく、企業らしさ=パーソナリティを伝えることが重要。

ダイレクトマーケティングは今やマーケティングの中心に

ダイレクトマーケティングの対義語は何かと考えてみると、近いのはマス・マーケティングでしょうか。顧客をマス(かたまり)と捉え、メッセージをそのマスにぶつけていく感覚。高度成長時代の大量生産、大量消費とも関係し、かつてはマーケティングの中心となる概念でした。

一方で、ダイレクトマーケティングは、まさにダイレクトに(直接)、また究極的には顧客の一人ひとりとつながることを目標としています。ダイレクトマーケティングでも、マスメディアは活用するので少しややこしいのですが、メディアの先にいる個々の顧客の捉え方に差があるのだと思います。

またダイレクトマーケティングと似た言葉に、ダイレクトレスポンスがあります。わかりやすいのは、「今すぐお電話を」。広告を見た後の早いタイミングで、直接レスポンスをもらうことを目的とするもので、顧客獲得(アクイジション)は、基本的にはダイレクトレスポンスと捉えてよいと思います。

もうひとつ、CRM(Customer Relationship Management)という言葉も聞かれたことがあるかもしれません。直訳すると「顧客関係管理」ですが、一度商品を買っていただいた顧客に、二度、三度、できることなら何年も買い続けていただくという考え方です。つまり、購入後の顧客との関係づくりと言えます。

このダイレクトレスポンスとCRMの両方を束ね、その上位にあるのがダイレクトマーケティングであると捉えています【図1】。小難しい話になってしまいましたが、ようは顧客一人ひとりとの直接的、継続的な関係をつくるという考え方となります。

図1 ダイレクトマーケティングとは

ダイレクトマーケティングも、ひと昔前には、マーケティングという世界の中では、マニアックで特殊な領域と捉えられていました。しかし、今や全ての企業は顧客を見ようとしていますし、ダイレクトにつながることを目指しています。デジタルや、データベースマーケティングなどの技術革新も影響し、いつの間にかマーケティングの中心に存在するようになり、今や意識されないほどに浸透しているとも言えます【図2】。

図2 ダイレクトマーケティングの変化

鳴るか、鳴らないか クリエイティブの役割は重大

私は、若い頃は博報堂の営業職でしたので、テレビCMの制作にも関わりました。CMがOAされると決まってクリエイティブ職の先輩方から聞かれるのが、「評判どうなんだ? 商品は売れているのか?」。そんなこと聞かれたって、わかりません。お得意先でもそんなにすぐには掴めてませんよ、と思いつつ、「社内の評判はよいみたいです」みたいな回答で誤魔化していました。

それが、ダイレクトの広告となると話が全く変わってきます。例えば新聞広告を出稿すると、コールセンター開業の9時と同時に電話が鳴り始めます。〇件のレスポンス(反応)があったというのが、明確に出て、誤魔化しがきかない。今回の広告は鳴ったのか(=電話がジャンジャン鳴る好反響だったのか)、全然鳴らなかったのかがハッキリします。

基本的には、とにかく多くのレスポンスを得る広告が“エラい”。どんなに素敵な広告であっても、またどんなに有名なクリエイターがつくったものであっても、レスポンスが少なければ負けとみなされてしまいます。

あれやこれやと考えて、思った通りの好レスポンスだった時は、とてもハッピーな気分を味わえる一方で、思惑が外れた時は、最高に悔しい。怖い世界でもありますが、とても面白い仕事だとも思います。

またダイレクトマーケティングでは「広告自体がお店である」と言われます。商品を手に取り、店員さんに説明を聞き、よし買おう、ということでレジに並ぶ。それと同じことが、広告上で行われます。AIDAの法則で言えば、Attention(なになに?)、Interest(なるほど)、Desire(欲しいかも)から、Action(電話しよう)まで一気に進めてしまうということです。

そんな行動を促すクリエイティブのテクニックに関しては、色々な文献もありますので細かく語るのはやめておきますが、例えば、ユーザーの体験談や恐怖訴求のコピー、タレントなどで振り向かせ、成分説明やNo.1訴求で興味を喚起し、「今なら〇%引き」「今だけ〇〇もセット」で背中を押す、というのがひとつのパターンです。

しかしテクニック以上に重要なのは、顧客の心理を理解し、顧客の納得度を高めるということだと思います。最近では、カスタマージャーニーと言われる、さまざまなステージでの顧客心理の変遷を整理する手法も開発されています。顧客の心理や気持ちにそったクリエイティブはやはりレスポンス広告として強いものになります。レスポンス広告に大切とされる顧客インサイトの発見、共感ワードの開発なども...

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