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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

「何を言うか」が8割 商品を中心に社会と人をつなぐことばを探す

中島英太氏(電通)

    広告コピーにおける発想法の極意

  • すぐれたコピーは商品やサービスの価値を生み出すことができる(=「価値のクリエイティブ」)。
  • 「どう言うか?」より「何を言うか?」の方が圧倒的に大事。「商品」を真ん中に「社会」と「人」をつなげる橋になるようなことばを見つける。
  • 「やさしくて鋭い目」と「素直で疑い深い耳」を持つ。

価値を真ん中にしたコピーの書き方

今回、宣伝会議さんから「コピーの発想法について書いてください」という依頼が来た時、「攻めてるなー宣伝会議」と思ったくらい、広告コピーを書くことを最近していません。とはいえ、ことばのちからを感じない日はなく、この数年は事業や商品の開発、経営戦略など広告の川上領域での仕事がほとんどでしたが、そこでもことばは圧倒的に大事だと感じています。そしてこれまでと違う山に登ると、もといた山の素晴らしさがよく見えるもので、つくづく「コピーライターってすごいなあ」と感心したりしています。

そんなクリエイティブとはちょっと異なる視点も交えながら「広告コピーを考える際の基本」について書いてみたいと思います。

広告に逆風の時代だからこそ「何を言うか」が8割

ご存じのとおり、いまは広告がなかなか効かない時代と言われています。その理由をすべて述べると長くなるので割愛しますが、理由のひとつに「主導権が企業から生活者に移った」ということがあります。

「昔はみんな俺の話を楽しみにしてて、なんか言えばめちゃめちゃ反応してくれたのに…いまや好き勝手に自分らの世界で盛りあがっちゃって、こっちの話なんか全然聞いてくんないんだよ…」とクダを巻いても仕方がありません。しかも単に聞いてくれないだけでなく「信用してくれない」というのが悲しい現実。とほほほ。

でも、それはあなたのせいではなく、あなたの語ることばのせいです。あなたのことばが彼らにとって「意味のあること」「価値のあること」であれば、みんな進んで耳を傾けるし、SNSでいいね!や拡散だってしてくれます。時代と共に価値観、消費行動、メディア接触行動が変わっても、人はいつだってポンと膝を打ちたい、目からウロコを落としたい生き物なのです。

この雑誌の読者であれば広告は「何を言うか/どう言うか」の2つが大事であることはご存じかと思います。そして、意味や価値を決めるのは圧倒的に「何を言うか」です。これがちゃんとしていなければ、どんなに「どう言うか」をがんばっても、あなたのことばはスルーされてしまうことでしょう。「あの人、うまいこと言ってるけど話の中身ないね」なんて陰口を叩かれたくなければ、「何を言うか」をとことん考えましょう。

すぐれたコピーは商品の価値を高める

はじめに断っておきますが「すぐれたコピー」にも色々あって、意味不明だけど気になる、好き、という類のものもあります。ただ理屈を超えた部分は理屈で伝えにくいので今回は触れないでおきます。

あらゆる商品やサービスには「価値」があります。機能、持ち味、長所、美点、可能性、ストーリーなどいろんな価値があり、それこそが広告アイデアの種です。はっきりと魅力的な価値が見えている場合はラクちん、そのまま伝えればお仕事終了です。けれどそんなケースは稀で、ほとんどの場合、価値は隠れていたり、冴えなかったり、意味がわからなかったりします。

そんな時に「価値の見立て」や「価値の再発見」によってみんなの前に価値を提示できるのがすぐれたコピーライターです(私はこれを「価値のクリエイティブ」と呼んでいます)。

たとえばアイスクリーム。「冷たくて甘い」という価値がありますが、これでは当たり前すぎて誰も気にかけません。けれど「アイスは三大栄養素(糖質、タンパク質、脂質)が豊富でのどごしもいい」と見立てると「つらい時にうれしい栄養食」という別の顔が出現します。そこから「ひきはじめの風邪に●●アイスが効きます」みたいなコピーが生まれるかもしれない。さらには「いまや全国の薬局の数はコンビニより多い。弱った人向けアイスを開発し薬局で売ったらどうか」みたいなアイデアも生まれるかもしれない(あくまでたとえ話です)。

ことばによる価値の見える化は可能性を広げます。すぐれたコピーは工場がなくても、最新のテクノロジーがなくても、ビッグデータがなくても価値を生み出すことができるのです。これってとってもエコでコスパがいい。

とどのつまり「何を言うか」とは、目のつけどころの勝負です。思い込みや先入観をひっくり返し、裏側にひそむ宝を見つける勝負です。同僚の澤田くんは「コピーライターとは、魅力の第一発見者である」と表現しました。隠れた魅力、まだ知られていない価値は、こちらが全力で探してあげないと見つかりません。しかも誰でも見つけられるような価値では意味がない。

10人中9人が諦めて引き返す中、ドアを2つも3つも開いてその先へ進んで行けるかどうか。時には空気を読まなかったり、ド正論をぶちかましたりすることも必要です。あなたのド根性、あなただけの目のつけどころが大事なのです。

「何を言うか」を考える際は...

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