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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

短距離のキャッチコピーとは違う!中距離、ボディコピーの『走法』

片桐義晴氏(コピーライター)

    ボディコピーの極意

  • ボディコピーは中距離走。走り切るためのペース配分が大切。
  • リズムの良さが文章の読みやすさにつながる。
  • クライアントの「伝えたいこと」と、読み手の「知りたいこと」のギャップをなくす。

まずは、「助走」 ボディコピーは中距離走

ビジネスにおける文章には、プレスリリースや企画書など様々な種類があります。そのなかでもボディコピーは、陸上競技でいえば中距離走に位置するものだと思っています。陸上の中距離は800~1500mですが、文章でいったら200~800文字くらい。そう考えると、キャッチコピーは短距離の100m走の感覚に近く、記事広告などの1000文字を超える長文は長距離走というのが僕の勝手なイメージです。

僕はコピーライターになる前、編集というフィールドで長文を書いていました。当時は、毎月の締め切りに追われ、毎日、原稿用紙にがんがん書き込んでいたのを思い出します。

その僕が広告の仕事に携わるようになり、いちばん苦労したのがキャッチコピーです。それまで長距離走の選手が100m走に挑むわけですから、簡単にはいきません。頭のなかで使う筋肉の部分が違うように感じました。逆にボディコピーを書くのは得意というか、それまで鍛えてきた脳の筋肉が役に立ちました。それがいつの間にか短距離特有のマッチョな筋肉になっていて、今では長文の仕事が来ると事前ストレッチに時間がかかりすぎます。

コピーを書いたことがない人でも、少し教えただけでキャッチコピーは書けます。完成度の高さは別にして、とりあえず100mは走れるのです。走り方がかっこ悪くても、遅くても、とりあえずゴールできます。ところが、ボディコピーはそうはいきません。横っ腹がいたくなったり、ペース配分がうまくいかず、息切れしたりします。安定したペースで書くには、ある程度の経験が必要です。

そこで、とりあえず初心者でもゴールができるよう、僕が普段心がけているボディコピー走法(書き方)をご紹介します。

基本は文章のリズムづくり ポイントは「文尾」

初級編として、「です・ます」調にするか「だ・である」調にするか、で文章の雰囲気が大きく変わってきます。特に要望がなく、こちらに任せてもらえる場合は、内容で判断します。例えば、企業姿勢を強く伝える場合は「だ・である」調が、やはり有効です。「です・ます」調の場合は、読者(消費者)に寄り添う感じにしたい場合とか。もちろんケースバイケースなので、柔軟に対処してください。

こういうことがありました。ある企業の事業紹介をするパンフレットの導入文を「だ・である」調にして進めていたのに、校了寸前で「~よろしくお願いします。」を文章の最後に入れたいとクライアントから要望がありました。もちろん「だ・である」で統一してきたルールがすべて変わってしまうので、そのままでは入れられません。結局、別の文章ブロックをつくって対処することにしました。後で困らないように、クライアントの意向をしっかり確認しておきましょう。

僕が文章づくりで大切にしているのはリズムです。読みやすい、読みにくい文章というのは、もちろん内容にもよりますが、リズムもポイントだと思っています。読んでいてどうもつっかえるようで、流れるように頭に入ってこないのは、文章のリズムが悪いことも影響しています。そのリズムを整えるのが文尾です。例えば

    今年、◎◎会社は創立50周年を迎えます。

    ◎◎メーカーのトップブランドとして走り続けています。

    当社が挑むのは、世界のビジネスフィールドです。

    現場の技術が、新しい力を創造します。

    思いもよらない素敵な未来が、きっと待っています。

    50年後の100周年が今から楽しみです。

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    思いもよらない素敵な未来が、そこに。

    50年後の100周年が今から楽しみです。

どうでしょう。箇条書きの文章が、文尾を変えるだけで読みやすくなったと思いませんか。書き慣れていない人によく見られるのが「ます。」の連発です。連発を減らし、文字を入れ替えたり、省略したり、少し文字を付け加えるだけでリズム感が出てきます。

「起転」+「承」「結」 最終走者にタスキをつなぐ

よく聞かれるのが、「起承転結」を意識するかどうか。僕の場合は、「起承転結」にはこだわりません。傾向として、「起転」は少し意識しています。「起転」とは勝手に僕がつけたことばで、最初にアテンションをかけて、目を惹きつけ「承」「結」につなぐ手法です。

コピー(広告)はみなさんご存じの通り、そもそも見られることを念頭に置いていません。見過ごされないように、アテンションをかけて惹きつける工夫にコピーライターは汗をかいています。コピーの場合、主にその重責をキャッチコピーが担っていますが、ボディコピーだって頑張っていると強く主張したいです。

「起転」は...

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