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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

ECサイトでの体験を豊かに 「顧客との摩擦を」軽減するUXライティングとは?

仲野佑希氏(UXライター)

    ダイレクトマーケティングの極意

  • 顧客に寄り添った文章、コミュニケーションで顧客の体験をサポートする
  • 顧客との摩擦を軽減することで購買プロセスから離脱を防ぐ
  • ECにおけるブランド「らしさ」は「ボイスアンドトーン(語り口)」で強化する

イスラエルで出会った新たな職業 UXライターとは?

私は2019年のちょうど今頃、イスラエルのブッキングドットコムのオフィスにて、UX(ユーザー・エクスペリエンス)ライターのミートアップ Designing Copy に参加していました。会場ではグーグルやドロップボックスなど、テック企業のUXライターがスピーカーとして登壇し、100名を超える参加者が、次世代のコピーライティング「UXライティング」について、熱心に議論を交わしていました。

UXライティングとは、Webサイトやモバイルアプリに表示されるテキストを書く技術のことです。

UXライターはボタンの文言、入力フォームのラベル、プッシュ通知、エラーメッセージ、404ページ、トランザクションメールなど、顧客との接点になるあらゆるインターフェイスのコピーを担当します。商品を売るにはコピーライターが必要ですが、UXライターの使命は、顧客が何かをしたいと思ったときに、タスクを完了するのを支援することです。加えてブランドが持つ「らしさ」を文章のスタイルで表現し、顧客に話しかけるように会話体のコピーを書くことが求められます。

これまで長い間、インターフェイスのコピーは、Webデザイナーやエンジニアが制作プロセスの延長で設計するケースがほとんどでした。もしかしたらあなたも、状況にふさわしくないボタンの文言や、ロボットのようなエラーメッセージを見たことがあるかもしれません。また、サイト内に難解な専門用語が使われていたり、機能名に造語が用いられていて、混乱した経験が一度はあるはずです。

このような背景からも、ブランドが発するひとつひとつの言葉を吟味し、顧客との対話を重視する、UXライターのような専門的なポジションが生まれたのは、必然と言えるかもしれません。

Eコマースの分野においても同様です。オンラインショッピングの体験そのものを支えるUXライティングの考え方は、顧客との関係を強化するのに一役買うのです。

イスラエルで開催されたUXライターのミートアップ「Designing Copy」。

購買プロセスに潜むECサイトの落とし穴

母親へ誕生日プレゼントを贈るために、ブランケットを探している女性を思い浮かべてみてください。ECサイトを眺めていると、カラフルなラッピングが施されたブランケットの写真が目に留まります。素材やサイズ、価格にも納得し、「限定20個」のコピーに後押しされて、購入を決意するかもしれません。購買意欲を高め、決断へ導くことができれば、マーケティング担当のコピーライターの役割はここでおしまいです。

しかし、オンラインショッピングはまだ終わりません。母親へブランケットを届けるには、個人情報、届け先の住所、そしてクレジットカード情報を入力する必要があります。

そして、この最後の購買プロセスには、そこに至るまでの苦労が水の泡になりかねない、落とし穴が潜んでいます。なぜなら顧客は、入力フォームの記入に手間がかかりそうだったり、操作の途中でつまずいたり、プライバシーやセキュリティへの不安が拭えないというだけで、購買プロセスを放棄してしまうからです。

顧客は、できるだけ個人情報を渡したくないと考えています。早く買い物を済ませたいのに「なぜ会員登録を強制されるのか?」「なぜ電話番号を入力する必要があるのか?」と、苛立ちを募らせるかもしれません。支払いの確認画面になって、予想外の手数料や、高額な送料が提示されれば、「どうしてもっと早く知らせてくれなかったのか」と不満を感じ、ページを閉じてしまうでしょう。

UXライターの仕事は、このような「顧客との摩擦」を軽減し、豊かな体験に変えることです。顧客が挫折感を味わったり、驚いたりしないようにコピーを設計します。先ほどの例では、会員登録を任意にして「会員登録をすると次回から決済情報の入力が不要になります。」のようなベネフィットを伝えるのも一案です。電話番号のフォームには「商品の配送伝票に記載します。それ以外の目的で使用しません。」と添えることで、セールスを懸念する顧客にも、記入してもらえる可能性が高まるかもしれません。

これらはほんの一例ですが、A/Bテストツールの普及によって、このような短いコピーが、顧客の行動に大きな影響を与えることがわかっています。UXの専門家であるジョシュア・ポーターは、これまで誰も注意を払っていなかった、小さいながらもパワフルなコピーに「マイクロコピー」という名前をつけました。適切なマイクロコピーを設計することで、顧客とビジネスのすれ違いをなくすことができるのです。

売上に直結するマイクロコピーの抑えるべきポイント

ここではもう少し深掘りして、ECサイトで抑えておくべきマイクロコピーをご紹介します...

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