今月のテーマ:パッケージデザインのクリエイティブ
パッケージには、商品の機能・特徴を伝える販売促進効果はもちろん、ブランド体験が重視される現代、ブランドの世界観を体現し、伝える役割もまた重要になってきています。加えて販売チャネルが多様化する中、チャネル別で異なる消費者の利用シーンも見据えた柔軟なデザインも求められるようになってきました。パッケージデザインの基本から現代の環境に合わせた最先端まで、クリエイティブディレクションのポイントを解説します。
- パッケージは広告の代わりとしても機能する。ブランドイメージを表現することが大切。
- 競合商品は意識しない。デザインが似ると、敵に塩を送ることになる。
- パッケージの変更で解決できる課題なのか、商品力の問題なのかをきちんと見極める。
パッケージデザインのポイント!
ブランドの歴史と未来を考えブランドの顔をパッケージで表現
当社は名古屋で主にパッケージデザインを手掛けています。名古屋には誰もが知っているナショナルクライアントが多くありますが、僕が担当しているのは青柳総本家・大和屋守口漬総本家などのローカル・クライアントが中心です。
ローカル・クライアントの多くは広告を大量出稿するほどの規模ではないので、パッケージが消費者との重要な接点として機能しています。そこでデザインを考え始める前に、必ずクライアント企業の歴史を調べ、さらにこれからの10年後、20年後についても考えます。もっと長くても良いのでしょうが、際限がないのでそれくらいにしています。
その時、リリースされる商品は長い歴史から見れば、ひとつの点にすぎませんが、それが積み上げられた結果がブランドイメージとなっていきます。だからこそ、過去と未来も踏まえてデザインを考えるようにしているのです。
例えば、「ういろう」を製造販売している青柳総本家は、130年以上の歴史があり地元では有名な「ういろう」メーカーという位置付けです。以前のパッケージデザインは片面がコーティングされたコートボール紙に派手な色が使用されていて、「メーカー」のイメージが強いものでした。これは昭和の時代に完全オートメーションによって「ういろう」が長期保存可能になったことを示唆するとともに、大手メーカーの商品に見えるようなデザインで安心感を醸成するためだったのでしょう。
時代は変わり、手づくりで日持ちしない「生ういろう」なども受け入れられるようになりました。かつては最新だった機械が、いまではレトロな手づくりマシンに見えて、違う魅力を放つように。そこで青柳総本家のケースでは「メーカー」ではなく、「大きな和菓子屋」というコンセプトを立てました。このコンセプトに合わせて、デザインは手づくり感のある表現に変更し、紙もざらっとした触感のあるものを使用するようにしました。
こうしてつくられた商品一つひとつが売り場で世界観を構成し、消費者にブランドイメージを伝えているのです。
競合商品を意識するより実現したい目的を重要視する
パッケージデザインを発注する際、競合商品を参考例として伝える企業もありますが、デザイナーによってはそれに縛られて、似た案になってしまう可能性があるので、注意が必要です。デザインが似ると、差別化できないのはもちろん、競合商品に対して自社製品が後追いであることを消費者に暗示し、競合商品のナンバーワンのポジション確立を助力してしまう可能性もあります。
また発注者自身が、提示した参考例に縛られ、せっかくの良い案を見過ごしてしまう可能性もあります。立場上、クライアントの意見が強くなりがちなので、競合商品に近い表現へ引っ張らないよう心がけてほしいです。
むしろオリエン時には、商品の売上目標はもちろん、会社にとってどういう効果を求めるかを明確にすべきです。例えば、その商品によって新しい販路を広げたいとか、これまでと違う企業イメージを伝えたいといったことです。そして、デザイナーは安易に似ているデザインにしてしまわないように注意する必要があります。
売り場が変われば用途も変わる 用途に合わせたパッケージとは
デザインは、売り場によっても変える必要があります。パッケージをデザインする時、ターゲットも重要ですが、売り場をより重要視しています。
食品の場合、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、百貨店、キヨスクなどの多様な売り場があります。スーパーマーケットの場合は、自家消費が中心なので、お得感のあるパッケージ、形状で言えば袋型が多用されます。
一方、百貨店はギフト用にもなるので箱に入れることもあります。同じ商品でも箱に入れるだけでギフトらしさが出るからです …