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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

書くことで考えを深化させていく 人々に真っすぐに飛ぶコピーの思考法

磯島 拓矢 氏(電通)

今月のテーマ:広告コピー企画・制作の基本

アナログだけでなくデジタルのメディアが登場し、さらにソーシャルメディアが浸透した時代においても、「言葉」によるコミュニケーションの重要性が変わることはありません。人々の共感を呼び起こす「広告コピー」はどのようなプロセスで発想し、形にしていけば良いのか。第一線で活躍するコピーライターの方が、コピーの基本的な発想法から昨今の環境を意識した今日的なコピーの書き方まで、ポイントやノウハウを解説します。

    コピーの考え方、ここがポイント

  • 「自己紹介したい」コピーの場合、まず"正しい"説明を考え、その上で、"新しい光を当てる"姿勢で言葉を見つける。
  • 「宣言したい」コピーの場合、発信するメッセージを固めるために、書くことで矛盾を発見・解決していく工程が有効。
  • 「提案したい」コピーの場合、人々の暮らしの中に根付きつつある気分を"後押し"するイメージで書くと良い。

商品・企業に"新しい光を当てる" コピーに発見を込めて書く

担当する商品があります。企業が存在します。そのためにコピーを書こうとした時、最初に考えなくてはいけないのは、「そのコピーで何をしたいのか」。実に当たり前のことなのですが、張り切った時ほど思いと言葉が先行し、「何をしたいのか」がスコーンと抜け落ちます。

商品名も企業名も、ある種のコピーです。そこに何か言葉を付け加える時、その言葉で何をしたいのか、言葉を付け加える意味は何か。つまり「目的」をしっかりと見据えることを、まずはオススメします。コピーの目的を大きく3つに分け、それぞれ具体的に説明します。

ひとつめは「自己紹介をしたい」場合です。商品や企業にとって、認知度や理解度に課題がある場合、このような目的のもとコピーが書かれることが多いでしょう。知ってもらいたい、分かってもらいたい。そのために言葉を尽くし、説明する。コピーを書く目的としては、最も分かりやすいと思います。

この時に大切なのは、まず「正しさ」だと思います。あえて乱暴に言いますが、書かれた言葉が面白くなくても良いと思います。まず、正しい言葉を記すことが大切です。自分たちが手塩にかけた商品、自分たちが所属する企業、人々にそれをちゃんと分かってもらうのは意外に難しいことです。まず、「正しい」説明にトライするのは、決して遠回りではないと思います。

そして、正しく言うとこれだね、という言葉が生まれた上で、その言葉に対し何を感じるか。「こういうことなんだけど」、「なんか弱いね」、「インパクトがないね」、「普通だね」、そう思うこともあるでしょう。そこからがコピー化です。ただし、いたずらに言葉を強くする、言葉づかいをあこぎにするのは避けた方が良いと思います(少なくとも最後の手段にした方が良いでしょう)。

では、どうするかというと、コピーを書く時の姿勢を少し変えてみるのです。具体的には、「正しく説明する」から、「ちゃんと言い当てる」に姿勢を変えてみると良いでしょう。これだけで発想も変わります。つまりは少し「発見」の要素が入るということです。この要素こそが「強さ」や「インパクト」の根源です。言葉づかいの強さはあくまで表層と思った方が良いと思います。

分かりやすい例として、大成建設さんが長年使われているコピー「地図に残る仕事。」を挙げます。建築という仕事を説明し、「自己紹介」をしているわけですが、ここには見事な発見があります。つまり建築とは、実は地図に残ってゆく極めて公共的な仕事なのだ、「みんなの」「この先の」存在になるのだ、ということです。この発見が「なるほど」と思わせ、このコピーを強くしています。

僕自身が手掛けた仕事ですと、旭化成の企業広告があります。メインのコピーは「昨日まで世界になかったものを。」。旭化成さんは化学メーカーであり、素材メーカーです。自動車メーカーが新しいものをつくっても所詮自動車ですが(乱暴に言っています)、素材メーカーが新しいものをつくったら、それは本当に世界を新しくするものなんじゃないか、そんな僕なりの発見を込めたつもりです。

「商品・企業の説明をしたい」という目的でコピーを書く場合は、その商品・企業に"ちょっと新しい光を当てる"つもりで書くと良いように思います。大仰な言い方をすれば、再定義するくらいの気分が良いのではないでしょうか …

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