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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

広告主の力になりたいという「アクセル」 を引き出す、オリエンの極意

岡田 秀美氏(富士工業)

今月のテーマ:オリエンの極意

さまざまな手法が登場し、コミュニケーション設計が多様化するなか、宣伝担当者にとって明確にクリエイティブ・ディレクションすることがますます難しくなっています。加えて広告・宣伝の投資対効果が追求される中で施策効果を最大化するためには、いかに制作会社・クリエイターへ高精度なインプットができるか、つまり「オリエン」がカギとなります。今回はオリエン成功のためのテクニックから、オリエン実施経験のない中小企業にも役立つノウハウまで解説します。

    オリエンの成功には、ここがポイント!

  • オリエン前に、クリエイターにとって良い環境を整える
  • オリエン資料は、伝えるべき内容の背後にある事情や経緯まで書き添える
  • 制作者をモチベートする伝え方に気を配る

良いオリエンに不可欠な3つの要素

良いクリエイティブを制作してもらうには、どのようなオリエンをすれば良いのでしょう。昔から、「良いインプット無くして、良いアウトプット無し」と言われるように、クリエイティブ制作におけるオリエンの重要性は、表現方法やメディアが進化した現代も変わりありません。

私は、これまでの経験上、良いオリエンには次の3要素が必要だと感じています。
(1)オリエン前に、良い環境を整えること
(2)オリエン資料は、伝えるべき内容の背後にある事情や経緯まで揃えること
(3)オリエンでは、制作者をモチベートする伝え方に気を配ること

では、3つの要素について順番にご説明します。

オリエン前に良い環境を整える

オリエンも言わば一種のコミュニケーション行為です。そう考えれば、良いオリエンとはすなわち、オリエンの受け手となる制作者側が欲しい情報を過不足なく伝えることに尽きます。

良い環境という意味では、広告会社との取引形態が重要です。私は、中長期的な視点において、また、自社のコミュニケーション活動を俯瞰する観点において、広告会社との取引は可能な限りAE制(アカウント・エグゼクティブ制:ひとつの広告会社が担当広告主もしくは担当ブランドのクリエイティブ制作、メディアバイイング全ての広告活動を扱う制度)を採ることが望ましいと考えています。

複数のブランドを擁す大企業におけるコミュニケーション活動の場合は、ブランド単位のAE制が良い場合もありますが、中小企業の場合、会社全体のコミュニケーション活動を1社の広告会社に委託するパートナー的存在になってもらうことが、さまざまな観点でメリットがあると考えます。この制度では、広告会社側も近視眼的な施策の提案に終始することなく、広告主企業の全体像と将来像を見据えながら、中長期的に社業貢献するような提案が可能です。

また、パートナーとして複数年活動を共にすることで、広告主企業や製品・サービス、属する業界や競合他社に対する理解も深まり、オリエンの度にそうした基礎情報から説明するようなことが不要となり、究極的にはオリエンそのものを必要としない関係性にまで発展する可能性もあると思います。

オリエン直前にできることとしては、プレ・オリエンがあります。これは、どんなオリエンをしたいのかを、広告会社の営業担当者だけに説明するものです。本番のオリエンでは、誰に聞いてもらうかが重要です。オリエンには、広告会社の営業、プランナー、クリエイター、時には傘下の関連会社からも、多くの関係者が参加します。せっかく集まってもらったスタッフがオリエンする内容と合っていないと、時間もやる気も削がれてしまいます。

オリエンする内容に合ったスタッフに集まってもらえるよう、あらかじめ営業担当者にプレ・オリエン時に概要を伝え、本番のオリエンに適切なスタッフィングで臨んでもらえるよう準備を促すと効果的なオリエンになります。

入念なオリエンを通じて、全面的にイメージ刷新した富士工業のカタログのページ。これまでのレンジフードにはなかった「テクノロジー感」を表現する、良質なクリエイティブを引き出した。

オリエン資料には伝えるべきことの背後にある事情や経緯まで加える

オリエンで伝える基本情報はオリエンシートに整理します。1シートにまとめることで、オリエンする側も頭を整理することができますし、社内関係者の認識を共通にする意味もあります。「迷ったら、オリエンに戻れ」と言われるように、判断に迷った時、議論が迷走した時、関係者の考えがブレ出した時など、オリエンシートに戻ることで、道に迷わず進むことができます。

実際のオリエンでは、オリエンシートの他に補足資料も用意しますが、ここではオリエンシートの主な項目に絞って記述していきます。

(1)商品説明

商品に搭載されている機能、それを実現する技術や材料などの情報です。それ以外にも、価格的な特長、スペック上の特長もあるでしょう。また、実際に商品を使ってみて得られるユーザーメリットも重要です。競合製品がある場合は、それらと比較した上でメリットを説明するとイメージが伝わりやすくなります。

(2)クリエイティブ提案が必要となった背景、経緯、事業上の重要性

提案を依頼することになった背景、経緯を説明します。「ライバル社の新商品に押されている現状を打破したい」、「新しいジャンルの商品なので商品理解が進まず取扱店が増えない」など、具体的な内容を伝えます。これには、提案してもらうクリエイティブが自社事業の課題解決にとっていかに重要かを理解し、提案の位置づけや期待の高さを感じてもらう狙いがあります。

(3)目的と目標

提案してもらうクリエイティブによって解決したいことは何か、これが目的になります。また、どの程度解決すれば成功と言えるのか、これが目標です。これらを曖昧にしておくと、実行後、成功だったのか、失敗だったのか、客観的に判断できなくなります。私は、提案時に効果測定の考え方や方法も合わせて提案してもらうことにしています。

ただし、方法によっては、実際の測定作業まで依頼してしまうと客観性が担保されなくなる可能性があるので、提案を受けるのは考え方や方法論だけに留め、実査は調査専門会社に委託するなど客観性を保てる手段を選択します …

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