今月のテーマ:イベント企画のクリエイティブ・ディレクション
今般のコミュニケーション環境では、「CX(顧客体験価値)」が重点課題として認知されるようになり、企業は最新のデジタルテクノロジーを駆使しながら「より良い体験の提供」を目指してきました。こうしてデジタルを活用したバーチャルな体験の機会が増えていくなかで、"リアル"な体験、濃密なコミュニケーションを可能にする「イベント」への注目が高まってきています。今回はイベント企画・設計から、集客、情報発信のノウハウまで幅広く解説します。
- 「五感」を刺激するなど、リアルな場でしかできない体験がイベントにしかできない施策へとつながる。
- 「どうすれば人の心を動かせるか」を生活者側の視点に立って考える。
- 統合的コミュニケーションからの視点と、イベント業務の専門的な視点の2つの視点が不可欠。
イベントのディレクション、ここがポイント!
統合的コミュニケーションにおいてイベントの重要性が増す
今回は、現場で日々プランニングやディレクションをしている立場から、私が感じていることや考えていること、そして大切にしたいと思っていることを紹介していきます。
その前に、まずはイベントという領域に限定する前に、業界としての大きなテーマ、前提、空気感のようなところに目を向けてみましょう。
今、あらゆるコミュニケーション手段の中で、クリエイティブ・ディレクションしなければいけない領域が、これまで以上に大きく広がっていると感じています。
例えば、広告キャンペーンひとつとっても、さまざまな要素や手法を複合的に組み合わせた、統合的な施策が増えてきています。その施策の中に「イベント」というものが、これまで以上に重要な位置付けとして含まれていることが非常に多くなりました。
それだけ、企業やブランドが抱えている課題が、より複雑になってきているのだと思います。
そうした中で企業の担当者も、今までは経験したことがなかったにもかかわらず、イベントの企画をしたり、ディレクションをしたりしなくてはいけないという機会が増えてきているのではないでしょうか。
そんな企業の担当者がイベントを企画・設計する際に、少しでもヒントになるようなことを、ご紹介できればと思います。
イベントの弱点をデジタルが補う 立体的な施策設計が増える
まず初めに、最近のイベント企画に見られる潮流といったものを、私なりの視点でご説明します(多分に私見が含まれているかもしれませんが、ご容赦ください)。
ここ数年、リアル=オフラインでのコミュニケーションの価値が高まっていると言われています。
以前は、イベントなどをはじめとするリアルな場での施策は、深く濃いコミュニケーションが出来る一方、情報を届けられる人が限定的になり、数的な広がりは弱いとされていました。つまり、「深さはあるけど、リーチが狭い」というのが弱点でした。
ただ昨今は、SNSなどをはじめとしてデジタル上でのコミュニケーション環境が整備され、それらをうまく活用した企業コミュニケーションの事例も増えてきました。
このような背景を通じて、リーチが狭いとされていたリアルな場でのイベントも、デジタル上で話題化され広がる可能性が生まれ、リアルな場の価値が、広告コミュニケーションという観点の中で、その立ち位置が見直されるようになってきたのです。
イベントの弱点であった広がり、つまりリーチの部分がオンラインの部分で担保されたので本来、リアルな場=オフラインが持っている「ブランド価値を直接的に伝えることができる」、「深くブランド理解をしてもらえる」、「好意醸成がしやすい」といった価値が、以前よりも高まっているのだと思います。
このように、ブランドの世界観をリアルな場に体現し、五感を通してブランドそのものを体験してもらう。そしてそれが、SNSを通じて広がっていく。このような活用のされ方を中心に、リアルなタッチポイントであるイベントの展開が増えてきています。
特に最近では、イベントが「ブランド体験の場」として、以前よりもさらに機能し始めていること。そして、それがコミュニケーションにおいても、広がりを生む可能性を秘めているということで、広告コミュニケーション全般においても、イベントの展開をうまく活用し、メッセージをより立体的に設計していく機会が増えてきています。
例えば、「マス広告などで発信したメッセージを、実感を伴って体験する場としてリアルの施策を組み合わせる」といったケースが見受けられます。

図 「MOMENT OF TRUTH」
人は情報や仕組みだけでは、動きません。電通ライブでは人の心を動かしていく感動体験=MOMENT OF TRUTHが、すべてのマーケティング活動のエンジンになっていくと考えています。
「伝える」だけではなく「どう行動」するかも問われる時代に
イベントなどリアルな場でのコミュニケーションの重要性が高まってきたもうひとつの理由として、広告コミュニケーションにおいて、ただ「伝える」だけではなく、企業やブランドが「どう動くのか」という「アクション」も重要になってきている、という流れがあるかと思います。
マスマーケティングに代表される、広く「伝えていく」というコミュニケーションだけでは、解決できない課題も多くなっている昨今、「何を伝えるか」だけではなく、企業やブランドとして「どのような/どのように行動をしているのか」といった「振る舞い」も大切になってきているのです。
そのような流れの中で、まさに「行動」=アクションとしてのコミュニケーションを実現する手段として、リアルなイベントの価値が高まって来ています。「伝える」だけではなく、リアルな「行動」として何をしていくのか、という価値の高まりと呼応するように、イベントというリアルな場ならではのコミュニケーションの価値が高まっているように感じます。
メッセージを「体験」で伝える イベントは稀有なメディア
では、そのリアルの場ならではの、イベントの企画や設計のポイントは、どういったところにあるのでしょうか …