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世界の秀逸プロモーションに見る 人の心を動かす「100のインサイト」

アドパーソン12人が選んだ『インサイトドリブン』な海外広告事例【10】鈴木 曜

Great Works Tokyo 鈴木曜氏

どれだけ新しいテクノロジーを駆使したところで、ターゲットの心理や心情の深い理解なしに、心に届くキャンペーンは実現し得ません。

それならば人の心を捉え、行動を喚起した広告キャンペーンを読み解けば、その背後には、人の根源的な欲求や心理が見えてくるのではないか…。そんな仮説のもと、世界の秀逸プロモーションを100点弱集めてみました。

事例を選定し、さらにその背後にあるインサイトを分析・解説していただいたのは、日本に留まらない活躍をされている12名のクリエイターやプランナーの方々。

12名の「選者」の方々に国内外の秀逸事例を解説いただきながら、有意なインサイトを得る方法から、そのインサイトを具体的な施策に落とし込む際のポイントを考えていきます。

Great Works Tokyo
CCO、クリエイティブディレクター
鈴木 曜(すずき・よう)

スウェーデンのデジタルクリエイティブエージェンシー「Great Works」のクリエイティブディレクター。企業ブランディングから書籍の装丁デザインまで幅広い活動を行う。

事例の選定テーマ

人間の本能的な願い・欲求

    広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」

    年齢を問わず、旅先では男女関係が親密になりやすい。

    Spies Rejser「Do It For Denmark!」


2014年にデンマークの旅行会社「Spies Rejser」が仕掛けた少子化対策キャンペーン。その名も「Do It For Denmark!」は、旅行後に妊娠が発覚すると、オムツをはじめとするベビーグッズ3年分がプレゼントされることに加え、旅行が無料になるという驚愕の内容だ。

人間は環境に心理が左右されやすい性質があり、旅先では非日常的な景色、普段食べない美味しい食べ物、楽しい体験などで気分が高揚します。そんな状況で異性と向き合うと、相手のポジティブな面やロマンチックさのほうへと目が行きがちになり、相手の評価が普段よりも増す可能性が高いと言われている。旅先で恋に落ちるという現象は、まさにこのような心理作用が働いていると言うことができるわけだ。

このような人間の心理に上手く働きかけ、国の課題とされている少子化問題の解決策にもなるという「世の中ごと」とも強くリンクしたために、かなりセクシーなクリエイティブにも関わらず、公開直後から国内外で大きな話題となった。ちなみに現在はこのキャンペーンがシリーズ化され、毎年趣を変えつつ実施されている。


    広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」

    夜のクラブは5感を刺激されたい人が集まりやすい。

    アサヒビール「Feel the Super Dry」

当社の中国チームがお手伝いさせていただいた、アサヒビールの上海でのクラブイベントの事例。イベントによる「ブランド体験」は、デジタルテクノロジーの発達によって、さまざまな拡張を見せている。このイベントにおいても、クラブに来場する顧客の好奇心を刺激するVRでの視覚体験はもちろん、聴覚・触覚・味覚・嗅覚という5感すべてでの体験をブランドと結びつける試みが行われた。

人間は5感を活用して記憶しようとすると、記憶しようとしている対象の情報が、一つではなく複数の回路によって脳に伝達される。5感を刺激して記憶を構成しようとすると、一つの感覚を使って覚えたときよりも、格段に記憶しやすくなるのだ。ポスターをはじめとするクリエイティブも、あえて5感に意識が向くように設計されており、体験の質を向上させるのに一役買っている。

このイベントは、著名なDJをアサインしたことも奏功し、通常のクラブイベントの4倍、一晩にして1000人を超える集客を獲得し、多くの顧客にブランドを5感で体験してもらうことができた。良質な体験は、その場のSNSでのシェアに留まらず、良質な関係構築を可能にする。


    広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」

    人は誰しも「旅」をしたいと考えている。

    Visit Sweden「Sweden on Airbnb」

スウェーデンの公式観光機関 Visit Swedenが、Airbnbとコラボレーションキャンペーンを実施し、話題をさらった。北欧に古くから存在する、自国以外のも含むすべての人に対して他人の土地への立ち入りや自然環境の享受を認める「自然教授権」という原則に則して、耕作地や個人の非公開の土地を除くほぼすべての公有地をAirbnb上で「無料で宿泊可能」として公開するという驚くべき内容だ。

旅をしたい人々を中心に、高評価と好意的なレビューを集める結果となった。何より、スウェーデンの美しい森や豊かな自然を多くの人が認識し、素晴らしい広告効果となったと考えられる。

人々がSNS上でコンテンツをシェアする心理的要因の中に「自分と他人に対して有益である」「感動する」「ストーリーが内包されている」という要素がある。国が仕掛けた全く新しい座組み・スウェーデンの「自然教授権」にまつわる物語・美しいグラフィック等……。世界の多くの人々がシェアボタンを押すために十分な要素を兼ね備えた、まさにインサイトをついて成功した企画の一つとして記憶に新しい企画といえる。


    広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」

    社会貢献よりも身近な家族の健康が大切。

    Coop「The Organic Effect」

スウェーデンの大手スーパーマーケットCoopが「オーガニック食品は身体に良い」ことをPRするために実施した企画 ...

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