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世界の秀逸プロモーションに見る 人の心を動かす「100のインサイト」

アドパーソン12人が選んだ『インサイトドリブン』な海外広告事例【7】笹本康太郎

電通ベンチャーズ 笹本康太郎氏

どれだけ新しいテクノロジーを駆使したところで、ターゲットの心理や心情の深い理解なしに、心に届くキャンペーンは実現し得ません。

それならば人の心を捉え、行動を喚起した広告キャンペーンを読み解けば、その背後には、人の根源的な欲求や心理が見えてくるのではないか…。そんな仮説のもと、世界の秀逸プロモーションを100点弱集めてみました。

事例を選定し、さらにその背後にあるインサイトを分析・解説していただいたのは、日本に留まらない活躍をされている12名のクリエイターやプランナーの方々。

12名の「選者」の方々に国内外の秀逸事例を解説いただきながら、有意なインサイトを得る方法から、そのインサイトを具体的な施策に落とし込む際のポイントを考えていきます。

電通ベンチャーズ マネージングパートナー
笹本康太郎(ささもと・こうたろう)

2003年に電通に入社し、プランナー及び営業として、国内外の幅広い広告関連業務及び事業開発業務に従事。2015年に電通ベンチャーズを立ち上げ、マネージング・パートナーに就任。ハーバード大学経営大学院MBA修了。

事例の選定テーマ

イノベーション

    広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」

    銃に対する意識を変えるのは、
    その物理的な手触りや日常への侵襲性だ。

    IM Swedish Development Partner「The Humanium Metal Initiative」


銃の根絶を目的に、銃から取り出した鉄を日用品のサプライチェーンに組み込んで商品化してしまうというプロジェクト。銃の危険性を理解はしているが自分ごと化はしきれていない一般消費者やブランドをターゲットに、実際に人を殺していたかもしれない生身の銃の負のオーラを、重みのある鉄の手触りで体感させ、行動を誘引するという企画だ。またそれを持続的なビジネスモデルとしてつくり込み、自律的にターゲットの日常生活に拡散させていくという仕組みも重要である。

具体的には、接収した不法所持の銃から鉄を鋳造し、「Humanium」と名づけてブランド化。主旨に賛同した貴金属メーカーや時計メーカー、デザイナーなどに卸売りすることで、世の中の鉄への需要を平和への需要に変換した。また時計など最終商品の販売収益の一部をレベニューシェアし、さらなる銃の接収に充てるという仕組みも構築した。今年のHumanium年間生産量は50トンにのぼる想定。著名ブランドとの商品製造に関するパートーナーシップも構築済みで、ダライ・ラマなど世界的権威から賛同の声も表明されている。


    広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」

    ゲーマーたちは、非公式/非常識な場で
    権限を与えられると躍動する。

    ストックホルム・プライド「Los Santos Pride」

LGBTに対する理解が低く、オフラインのパレードにはなかなか参加しないようなゲームコミュニティをターゲットに、人気ゲーム内でバーチャルLGBTパレードを実施。MODという改造データを活用してターゲットの自主参加を促し、話題の拡散を図った施策だ。押しつけのコミュニケーションには興味を持たず、情報の出所やオーナーシップに敏感なゲーマーたち。彼らを情報の発信者として企画に巻き込み、「暴力が支配する街であえて平和のパレードを行う」というハッキング的な面白さ・難易度も燃料にしながら、施策を展開した。

具体的なアプローチとして、影響力のあるMODクリエイターをハブとした巻き込みや、非公式さ・手づくり感のアピールを徹底して行ったことなども、企画の主導権をターゲット側に委譲する仕組みとして効果的・効率的であった。Los Santos Prideは、YouTubeなどで600万回以上の再生回数を記録。またカンヌ・イノベーション部門の審査では、グーグル等のエリートによるPolitically Correctなイノベーションに対置される、草の根的でChaoticなイノベーションの象徴としても高評価を得た。


    広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」

    異質なもののロマンチックな組み合わせが、
    知的興奮と感動を生む。

    国際ジャガイモセンター(CIP)「Potatoes on Mars」


「火星でも育つジャガイモをつくる」というロマン溢れるミッションを通して、ジャガイモの潜在能力を広く世に示すことを狙ったキャンペーン。ジャガイモという圧倒的にありふれた存在を火星という未知の象徴と組み合わせ、またその一見ふざけたプロジェクトを専門的なスタッフで大真面目に展開することにより、大きな知的・感性的インパクトを生み出した。また開発したジャガイモを途上国の食糧問題解決にも活用するという仕立てで、人々のfor goodへのニーズも刺激した。

具体的な展開としては、NASAなどとの協業により、火星に近い過酷な環境をシミュレートする実験室を構築し、世界最大のジャガイモ遺伝子バンクを持つペルーのリマを拠点としながら、新種の配合に挑戦。開発した新種"Unique"の種植え及び育成をライブ映像で世界中に配信し、誰もが象徴的に持つ生命誕生の原風景とも重ね合わせながら、大きな感動を喚起した。ライブ映像は100万を超える視聴者数を記録。また開発された新種のジャガイモは、すでにバングラデシュの過酷な環境下に送られ、食糧危機の解決に貢献している ...

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