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世界の秀逸プロモーションに見る 人の心を動かす「100のインサイト」

アドパーソン12人が選んだ『インサイトドリブン』な海外広告事例【6】佐々木康晴

電通 佐々木康晴氏

どれだけ新しいテクノロジーを駆使したところで、ターゲットの心理や心情の深い理解なしに、心に届くキャンペーンは実現し得ません。

それならば人の心を捉え、行動を喚起した広告キャンペーンを読み解けば、その背後には、人の根源的な欲求や心理が見えてくるのではないか…。そんな仮説のもと、世界の秀逸プロモーションを100点弱集めてみました。

事例を選定し、さらにその背後にあるインサイトを分析・解説していただいたのは、日本に留まらない活躍をされている12名のクリエイターやプランナーの方々。

12名の「選者」の方々に国内外の秀逸事例を解説いただきながら、有意なインサイトを得る方法から、そのインサイトを具体的な施策に落とし込む際のポイントを考えていきます。

電通 エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター
第4CRプランニング局長、デジタル・クリエーティブ・センター長
佐々木康晴(ささき・やすはる)

1995年電通入社。コピーライター、インタラクティブ・ディレクター、電通アメリカECD等を経て現職。デジタルによってクリエーティブはどう進化できるか、いつも考えつつ、毎週のように釣りに出かけている。

事例の選定テーマ

デジタル×エモーション

    広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」

    学校に行きたくない理由は、着ていく服がないから。

    ワールプール「Care Counts」


データによれば、アメリカの学生の5人に1人が、家に洗濯された清潔な服がなくて困っているとのこと。そして、毎日4000人の学生が、さまざまな理由によって学校に行かなくなってしまうとのこと。学校に行かない子どもたちは、将来的な失業率も高くなり、犯罪を起こしてしまう確率も高くなる。そこで、子どもたちが無料で自由に使える「洗濯機」を学校に置いたらどうなるか。結果、90%以上の生徒たちの登校が改善され、授業にも出るようになり、95%以上の生徒たちが課外活動に参加するようになった。

この事例は今年のカンヌのクリエイティブデータ部門グランプリを受賞している。さまざまなデータを元に、そこから見えないインサイトを掘り出しながら、それをもとにジャンプ力のある大きな解決アイデアを生み出して、それを世の中に実装する。これが今のクリエイティブに求められているスキルの一つだが、これはそのスキルを用いた代表的な事例だと言える。データ自体はただの数字の羅列にすぎないが、そこには、人のエモーションを刺激し人の気持ちや行動を変えるヒントがある。


    広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」

    自分がネットいじめしているとは、気づかなかった。

    Headspace「Reword」


Cyber-bullying(ネットいじめ)は、今や世界中で発生している大きな社会問題の一つである。画面上の何気ない一言は、実世界の言葉以上に、人の心を傷つけることがある。言う側は、そんなつもりで書いていなかったりする。もしくは、実世界では言いにくい言葉も、ネット上ではさらっと書けてしまったりもする。それが、受け取る側には重くのしかかる。しかし、「ネットいじめをやめよう」という呼びかけだけでは、いつまでたっても問題はなくならない。

Rewordは、Webブラウザのプラグイン等として機能し、自分が「言うべきでない」言葉を書いてしまったときに、自動的に赤線を引いて注意喚起し、書き直しを促す。複雑な言い回しや、コンテキストに依存するいじめ言葉もきちんと判別する。ネットいじめ防止のための教育システムである。膨大な言葉はリアルタイムにデータベースに蓄積され、辛い言葉を投げかけられた子が、自らその言葉を「皆に使ってほしくない言葉」として、システムに登録することもできる。結果として84%の言葉がRewordされ、いじめも67%減少した。


    広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」

    皆でわいわいお菓子を食べると、普段より美味しい。

    チートス「Cheetos Museum」

皆に、昔からあるスナックのチートスを思い出してもらい、楽しんでもらい、もっと買ってもらうには、どうすればよいか。そこで生まれたのが、Cheetos Museumというアイデアである。世の中には同じ形のチートスは二つとない。そしてどのチートスも何かの形に似ている。皆に、珍しい形をしたチートスを探し出してもらい、良いものをスペシャルな美術館Cheetos Museumに収蔵してあげる、という仕組みである。複雑なテクノロジーは使わず、ソーシャルメディアで誰もが簡単に参加できる。

ネットの参加型コンテンツは今までもいろいろあったが、参加に手間がかかるものはなかなか広がらない。ユーザー側のクリエイティビティを過度に期待しても、それほど面白いものが集まらないのだが、このCheetos Museumは本当に簡単で、誰もが変な形のチートスを見つけることができ、「参加したい」という気持ちを起こさせる。結果、全米でたくさんの「作品」が発見され、ものによってはeBayなどのオークションサイトにて高値で取引された。これがさらにニュースを誘発し、話題は世界中に広まっていった。


    広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」

    難しそうなものほど、もっと楽しく学びたい。

    江崎グリコ「GLICODE」


初めてプログラミングを学ぶ子どもたちのために、お菓子を使った楽しく簡単な学習環境を提供した事例。プログラミングは小学生の必須授業となり、これからのデジタル時代に向けた重要なリテラシーの一つとなってきている。しかしプログラミングは、教えられる先生や教材がまだ揃っておらず、多くの親にも苦手意識がある ...

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