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世界の秀逸プロモーションに見る 人の心を動かす「100のインサイト」

アドパーソン12人が選んだ『インサイトドリブン』な海外広告事例【3】佐藤カズー

TBWA HAKUHODO 佐藤カズー氏

どれだけ新しいテクノロジーを駆使したところで、ターゲットの心理や心情の深い理解なしに、心に届くキャンペーンは実現し得ません。

それならば人の心を捉え、行動を喚起した広告キャンペーンを読み解けば、その背後には、人の根源的な欲求や心理が見えてくるのではないか…。そんな仮説のもと、世界の秀逸プロモーションを100点弱集めてみました。

事例を選定し、さらにその背後にあるインサイトを分析・解説していただいたのは、日本に留まらない活躍をされている12名のクリエイターやプランナーの方々。

12名の「選者」の方々に国内外の秀逸事例を解説いただきながら、有意なインサイトを得る方法から、そのインサイトを具体的な施策に落とし込む際のポイントを考えていきます。

TBWA\HAKUHODO
チーフクリエイティブオフィサー
佐藤カズー(さとう・かずー)

グローバル視点のBig Ideaで200以上の賞を受賞。また2012年、2017年カンヌなど、デザインからデジタルにわたる多領域の国内外アワードの審査員を務める。2011年JAAAクリエイター・オブ・ザ・イヤー・メダリスト。2013年Campaign Creative of the Year。

事例の選定テーマ

デジタルクリエイティブ

    広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」

    地元を誇りに思う気持ちは誰にでもある。

    Beats By Dr.Dre「Straight Outta」

ユニバーサル映画とBeats By Dr.Dreが行った映画「Straight Outta Compton」の共同プロモーション。映画のタイトルを意訳すると、「カリフォル二ア州のコンプトンから出てきたぜ!」という意味があり、このレペゼンどこ出身?ということをテーマにユーザーが自分の出身地が記されたロゴをジェネレートし、「#StraightOutta」でソーシャル投稿できるという非常にシンプルなキャンペーン(当社の場合はStraight Outta Shibaura)。

オウンドでスタートしたキャンペーンではあったが、巧みなインフルエンサーの使い方によって、たった1日で世界中でバイラルする事象となる。その後も一般ユーザーの投稿は勢いを増し、最終的に約800万人がシェア。企業や国連までもがキャンペーンに便乗し、オバマ前大統領の投稿に至るまで発展した。誰もが地元を主張したいという最もシンプルなインサイトを、最もオーソドックスな手法であるロゴジェネレートで成功を収めた施策である。


    広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」

    遊び心あふれる企業の施策には乗っかりたい。

    マース スニッカーズ「Hungerithm」



インターネットはユーザーの本音が集まる場所。そこにはさまざまなユーザーの本音や正直な気持ちが存在する。その感情データをソーシャルポストから計測、アルゴリズム化し、なんとセブンイレブンで販売するスニッカーズの売値をリアルタイムに上下させるという前代未聞のプロモーション。例えばオンライン上の投稿で怒りの感情数値が高い瞬間は、「スニッカーズを食べていつもの自分を取り戻してください」というメッセージとともに商品の値段を下げる。

また逆の投稿が多い瞬間は値段が上がるという、値段をゲーミフィケーションしている点が非常にユニークである。この施策は売上を前年比19.25%押し上げ、セブンイレブン単体では67%の売上増という結果をもたらした。自虐的というべきか、太っ腹というべきか。こうした企業のやんちゃな施策にユーザーは乗っからざるを得ない。


    広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」

    もっともツイートしたくなるモーメント、それはスポーツのライブ中継。

    アンダーアーマー「#BreakTheGame」

NBAのバスケットボール選手であるステファン・カリーは、世界で最も優れた3ポイントシューター。アンダーアーマーは契約選手でもある彼の試合の最中に、すべてのNBAファンをエンゲージする施策を行った。それは彼が3ポイントを決める度に、3秒のCMをソーシャル上で公開するという内容。ライブ性の高いコンテンツとの相性が抜群であるTwitterの特性を把握し、これを最大限活用したエンゲージメントアイデアである ...

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