どれだけ新しいテクノロジーを駆使したところで、ターゲットの心理や心情の深い理解なしに、心に届くキャンペーンは実現し得ません。
それならば人の心を捉え、行動を喚起した広告キャンペーンを読み解けば、その背後には、人の根源的な欲求や心理が見えてくるのではないか…。そんな仮説のもと、世界の秀逸プロモーションを100点弱集めてみました。
事例を選定し、さらにその背後にあるインサイトを分析・解説していただいたのは、日本に留まらない活躍をされている12名のクリエイターやプランナーの方々。
12名の「選者」の方々に国内外の秀逸事例を解説いただきながら、有意なインサイトを得る方法から、そのインサイトを具体的な施策に落とし込む際のポイントを考えていきます。

PARTY
プログラマー/テクニカルディレクター
中村大祐(なかむら・だいすけ)
2011年の設立当初よりPARTYに参加。2013年に2年間、電通CDC局に出向。2017年7月よりクリエイティブディレクターに就任。デジタルキャンペーン、映像、イベントなど、さまざまなプロジェクトに携わる。
事例の選定テーマ
デジタル
広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」
ローマ教皇のありがたいお言葉だから嫌じゃない。
CANAL+「AiMEN」

フランスの有料テレビ局「CANAL+」が放送する、ジュード・ロウが若く魅惑的なローマ教皇を演じるドラマ『ピウス13世 美しき異端児』のローンチキャンペーン。ピウス13世のSNSアカウントをつくって、TwitterやFacebookなどのSNS投稿をリアルタイムにモニタリング。そこで悩みや暴言などの投稿を見つけ、その投稿に対して聖書の一節を自動返信していくという施策。
通常、キャンペーンアカウントから直接メッセージを送りつけられるのはとても嫌がられる行為だ。しかし、ありがたい聖書のお言葉であること、かつ、人工知能IBMワトソンが投稿内容を分析し、最適な一節を選択する仕組みにしていることで、嫌がられにくいとてもユーモアのある行為にしている。結果、100万人の投稿に返信して、400万人にリーチ。フランスにおいてテレビ番組の一番成功したローンチキャンペーンとなったとのこと。
広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」
欲しいモノだったら、ついでに寄付してもいい。
Alivia Foundation「War on Cancer」
ポーランドでは毎年10万人が新たにがんと診断され、国全体では50万人が闘病生活を送っている。がん患者支援団体の「Alivia Foundation」は、日頃寄付をほとんどしない若い男性たちをターゲットに、スマートフォンゲーム「War on Cancer」をつくり、"アプリ内課金"で寄付を集めた。
主人公が次々に"がんモンスター"を倒していくバトルゲームで、ゲームが進むにつれ"がんモンスター"はどんどんパワーアップしていく。そのため、その都度プレイヤーは新しい武器の購入が必要になり、まんまと新しい武器を購入していくはめになるのだが、この武器購入でのアプリ内課金が、がん患者への寄付につながる仕組み。
この施策を宣伝するため、同団体はあえて普通のゲームアプリを紹介するかのようなティザーCMをつくって告知。結果、見事ターゲットの注目を集め、最終的には約1億5000万円を超える寄付金を集めることに成功。なかなか真似できないハイリスク・ハイリターンな取り組みだが、ゲーゲットの興味を元に寄付の仕組みをつくり、それが啓蒙活動にもなっているのは面白い。
広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」
現地の人が言うことなら信用してもいい。
visit.brussels「#CallBrussels」
ベルギーのブリュッセルは、テロの脅威がある都市として国際的に報道され、"大変危険な都市"というイメージを世界各国の人々に植えつけられてしまった。そこで、同国政府観光局「visit.brussels」は、ブリュッセルは安全な街であるということを世界に伝えるため、"ブリュッセルの状況をブリュッセル市民に直接聞ける"とてもシンプルな施策を実施した。
ブリュッセル市内3カ所に、画面に「電話に出よう」と表示された、受話器つきのサイネージを設置。同時に、この施策を米国や日本など世界各地に告知し、ブリュッセルの状況を知りたい人は、専用Webサイトを通して簡単に"現地"に電話を掛けることができるようにした。設置されたサイネージに世界各国から電話がかかってきて、受話器を取ったブリュッセル市民が「ブリュッセルは安全」と伝えた。
結果、実施期間5日間で世界154カ国から1万2688件の電話(74%が国外から)が寄せられ、SNSでは900万件を超える人が「#CallBrussels」を目にするという成果を挙げることに成功した。
広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」
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