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世界の秀逸プロモーションに見る 人の心を動かす「100のインサイト」

アドパーソン12人が選んだ『インサイトドリブン』な海外広告事例【5】淮田哲哉

博報堂 淮田哲哉氏

どれだけ新しいテクノロジーを駆使したところで、ターゲットの心理や心情の深い理解なしに、心に届くキャンペーンは実現し得ません。

それならば人の心を捉え、行動を喚起した広告キャンペーンを読み解けば、その背後には、人の根源的な欲求や心理が見えてくるのではないか…。そんな仮説のもと、世界の秀逸プロモーションを100点弱集めてみました。

事例を選定し、さらにその背後にあるインサイトを分析・解説していただいたのは、日本に留まらない活躍をされている12名のクリエイターやプランナーの方々。

12名の「選者」の方々に国内外の秀逸事例を解説いただきながら、有意なインサイトを得る方法から、そのインサイトを具体的な施策に落とし込む際のポイントを考えていきます。

博報堂 データドリブンマーケティング局
グローバルデータマーケティンググループ グループマネージャー
淮田哲哉(わいだ・てつや)

デジタルやデータを活用したマーケティング領域の戦略プラニング、ブランディング、事業開発、グローバル展開、企業のマーケティング高度化を主に担当。海外業務にも精通。

事例の選定テーマ

データ

    広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」

    音楽は、その時その人の気持ちを支えてくれる。

    Spotify「Thanks 2016, It’s Been Weird.」

音楽ストリーミングのSpotifyのキャンペーン。年度末に、ユーザーがこの1年間に聴いていた音楽を振り返り、世界各国のアウトドア広告にユニークなメッセージとして展開した。1億人以上のリスナーの、アーティストや楽曲、プレイリスト、地域やロケーションなどの数億件のデータから異常値を見つけ出し、ユニークな聴取行動のインサイトを発見。

リスナーの音楽インサイトを捉えた150以上のメッセージを、生活者のコンテクストを踏まえたアウトドア広告として、その瞬間のユーザーの状況や気持ち、聴きたくなる音楽を可視化したことで、SNSでも反響を呼んだ。メッセージの一例に、「バレンタインデーに"Sorry"を42回聴いたあなたへ。何しちゃったの?」「Brexitの投票日に"It’s the End of the World As We Know it."を聴いた3749人の皆さんへ。諦めないでがんばろう。」など。

Spotify史上過去最高の新規ユーザー獲得に成功したほか、再アクティブユーザー数も50万人増。10億件以上のストリーム再生と66万9000回のシェアを獲得し、ブランド認知がグローバルで10%向上した。


    広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」

    誰かと会話をすることで、恥ずかしい思いをしたくない。

    Italia Longeva「Chat Yourself」


イタリアの高齢化研究機関 Italia Longevaがアルツハイマーの患者向けに開発した、24時間リアルタイムサポート型のサービス。FacebookデータをAIで活用し、自分自身とチャットをすることで記憶を確認できるものだ。娘の名前を忘れたら、その人の名前を写真つきで表示し、電話番号も答えてくれる。薬の時間や寝る時間は、プッシュ通知で教えてくれる。帰り道を忘れたら、地図で答えてくれる。アルツハイマーは医学的に進行をコントロールできず、周囲も助けることが難しい。

家族や友人と会話をすることで、自分がアルツハイマーだと相手に気づかれたくないため、患者は自分の世界にこもってしまう。こうした患者の状況を踏まえ、心理学者とともにデータをもとに患者の行動パターンを深く研究、AIで学習させた。広告を出すことなく、24時間以内に1万5000人以上にリーチし、インプレッションは3万以上。動画は1万ビューにのぼった。患者の生活習慣や行動を変え、その家族の負担をも軽減するアイデアだ。


    広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」

    地域のニーズは、その地域の住民が一番よく知っている。

    Sberbank「Neighborhood」

ロシア最大手の銀行 Sberbankが、起業家・中小企業向けローンのプロモーションを目的に展開したキャンペーン ...

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