訪日旅行客数が年間2000万人近くに達した今、その多くが東アジアの観光客だ。 彼らのインサイトを捉え、地方創生を実現するためのポイントとは。
台湾で日本旅行ブームのきっかけを作った映画『KANO1931海の向こうの甲子園』。
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訪日外国人の数は2013年からの3年間で、約1100万人の伸びを見せている。日本政府観光局(JNTO)が1月に発表した統計によると、2015年に日本を訪れた外国人は1973万7千人。政府が目標としていた「2020年に2000万人」という数字を5年前倒しで達成した形だ。その内訳をみると、中国、韓国、台湾、香港の東アジアが72%を占めている。
日本航空に32年勤め、台湾に約8年駐在した経験を持つジェイアール東日本企画の鈴木尊喜氏(ソーシャルビジネス開発局担当局長)は、「インバウンドは、地方創生を実現する有効な手段のひとつ」と話す。
チャンスが広がっているのは既存の有名観光地だけではない。従来は観光ルートになりえなかった場所に訪日客が訪れる現象も起きている。
例えば、日本統治時代に日本人監督により甲子園に出場した台湾の野球チームを描いた映画『KANO 1931海の向こうの甲子園』のヒットを機に、2年前に台湾で日本旅行ブームが起きた。これにより、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場に台湾人観光客がこぞって訪れるようになったというケースもある。
鈴木氏は「訪日客を呼び込むには、彼らのインサイトを的確に把握することが重要」といい、各土地ならではのストーリーや歴史、文化を掘り起こすことで「訪れたい」と思わせる魅力ある観光地が生まれる可能性がある。
同時に、地方では二次交通の充実が課題という現状も。個人旅行者が移動するには、日本語をよほど巧みに話せなければ難しい。団体旅行では画一的なプランになり、一部の場所に集中しがちだ。だからこそ各地のストーリーを発掘することで、新たな周遊ルートの開拓にもつながる。インバウンド消費の舞台を各地方に分散させる効果も期待できるだろう。
訪日客を呼びこむためには、地域のストーリーある歴史や文化がカギとなる。
当時甲子園に出場した台湾の野球チーム。甲子園球場の見学に、多数の観光客が来た。
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ジェイアール東日本企画 ソーシャルビジネス開発局 担当局長
成蹊大学法学部卒。日本航空入社後、本社営業本部、東京・名古屋・大分支店勤務を経て、2005年台湾に赴任創造旅行社(JALPAK台湾)の董事長兼総経理(社長)として訪日旅行ビジネスに8年間従事し、2013年に帰国。2015年より現職。 |