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米国PRのパラダイムシフト

アメリカの最新事例から学ぶ 人を惹きつけるコンテンツとは

岡本純子(コミュニケーションストラテジスト)

読売新聞記者、PR会社を経て活動する岡本純子氏による米国からのレポート。現地取材により、PRの現場で起きているパラダイムシフトを解説していきます。

顧客に自発的に来てもらう

インバウンドマーケティング。最近では、「インバウンド」と言うと、外国人観光客の誘致などの意味で使われることが多いが、そもそもの意味は少し異なる。潜在顧客が求める、欲しがるコンテンツをネット上で提供し、検索結果やソーシャルメディア上で、生活者に見つけてもらい、自らのサイトに来てもらって、顧客として取り込むというマーケティング手法だ。2005年にアメリカ・ボストンにあるマーケティングソリューション会社HubSpotのCEOブライアン・ハリガンによって提唱された。

広告やセールスのように、顧客の嗜好や希望に関係なく押し付けるものではなく、自発的に向こうから「インバウンド」で来てもらう、という考え方になる。さらに効果が測りやすく、広告などと比べて比較的低コストであることからPR、マーケティングの潮流として注目を集めている。相手の心に刺さるコンテンツづくりという観点では日本のPRプロフェッショナルの持つ知見も活用しやすい。今回はその活用事例やポテンシャルについてご紹介しよう。

コンテンツマーケとの差

生活者が求める情報を自らコンテンツとして提供するというのは「コンテンツマーケティング」と同じで、実はこの2つ、かなりコンセプトは似ている。一般的には「コンテンツマーケティングはインバウンドマーケティングの一部」と定義づけている人が多いようだ。というのも、コンテンツマーケティングはコンテンツをつくり出すところに主軸を置いているのに対し、インバウンドはコンテンツで見込み客を引き込んでから、顧客にするまでのプロセスを一気通貫でカバーする(図1)。コンテンツづくりから、フォローアップ、顧客化するまでのすべてのプロセスをウェブ上で管理できるシステムがあり、HubSpotもそうしたソフトウェアを提供する会社のひとつだ。このソフト上で、ブログやソーシャルメディアの投稿・管理、メールの送付、ソーシャルメディアのモニタリング、ウェブページ作成、見込み客のリスト管理、SEO(検索エンジン最適化)までが一括してできる。さらに、それぞれのコンテンツがどのようなトラフィックを生んだのか、サイトにどういうアクセスがあったのかなどを詳しく分析、数値化できるため、効果が非常に可視化されやすい。

図1 インバウンドの概念

アメリカでは、このようにソーシャルメディア、オウンドメディアなどでの自社のPR活動の効果をモニタリングし、データとして管理できるソフトウェアやアプリケーションを提供する企業が数多く存在し、こうしたテック企業の存在が、PRのデジタルシフトの原動力にもなっている。

このほかにも企業のコンテンツづくりや管理・モニタリングを代行するサービス、メディアと企業の間を仲介するサービスなど、多くのベンチャー企業がPR・マーケ業界に参入しており、彼ら自身も百花繚乱のインバウンドマーケティングを展開している。渡米したばかりで右も左も分からなかった筆者は、こういった企業の提供する最先端のPRトレンドやマーケティングの動向などについてのレポートや調査をずいぶん頼りにしたものだった。調査レポート、トレンドレポート、記事、ウェブ上のセミナー、白書など、かなり手間暇かかった濃い内容のものも多く、非常に参考になった。

HubSpotも多くのコンテンツを提供しているが、「インフォグラフィックス」のパワーポイントのテンプレートなども無料で提供している。ダウンロードする際などにメールアドレスなどを登録しておけば、新たなコンテンツ情報が送られてくる。企業側はこうして見込み客の情報を入手して、リスト化し、より精度の高いマーケティングができるわけだ。

時代を読む力が求められる

インバウンドのお客を自社サイトなどに誘引する導線は様々だ。主なものはブログ、動画、メール、ソーシャルメディア、SEO、インフォグラフィックス、シンポジウム、オンラインセミナー、記事、白書、データ、リサーチ、Q&A、ポッドキャスト(ネット上のラジオ)などだ。

とにかく、「役に立つ」「読んでもらえる」「楽しんでもらえる」コンテンツが肝だ。社会のトレンド、客のニーズやウォンツを的確に捉える時代を読む力が求められるが、ここが、PRプロフェッショナルの本領の発揮のしどころ。図2のように、コンテンツの約4割ほどはPRやマーケティングの担当者によってつくられている。そのほか、経営幹部やゲスト執筆者、フリーランス、代理店が関与することもある。

図2 誰がコンテンツをつくるのか

中小企業での導入が進む

HubSpotの調査によれば、アメリカでは従業員201人以上の企業では約49%、26~200人規模の企業で71%、25人以下の会社で84%が何らかのインバウンドマーケティングを導入しているという。予算の限られた小規模の会社ほど …

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