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米国PRのパラダイムシフト

ブランドジャーナリズムの実践 「トヨタイムズ」開設から1年

岡本純子(コミュニケーションストラテジスト)

新聞記者、PR会社を経て活動する岡本純子氏によるグローバルトレンドのレポート。PRの現場で起きているパラダイムシフトを解説していきます。

2015年11月、パラリンピックに関する発表会でプレゼンをする豊田章男社長(本誌撮影)。

この連載を始めたのが2015年1月。丸5年を迎えた。グローバルのベストプラクティスを日本のPRプロフェッショナルの方々にご紹介し、ヒントにしていただければ、ということで、毎号、四苦八苦しながら、テーマをひねり出してきた。

ネット社会の到来やソーシャルメディアの隆盛など各国を取り巻く環境は似ている部分もあるが、日本はまだまだオールドメディア偏重だ。企業の広報部の仕事は主にメディアリレーションズであることなど、グローバルとはPRの慣行も常識もまだまだ違うと実感する。一方で、日本企業の中でも先進的なPRの形を探り、実験を続ける会社も現れ始めている。その筆頭が日本を代表する企業「トヨタ自動車」だ。

10年で浸透した「章男スタイル」

コミュニケーションへの徹底したこだわり、という観点で、豊田章男社長の右に出る者はいないだろう。10年ほど前、国内メーカートップとして初めて、モーターショーのプレスブリーフィングで、堂々と身振り手振りを入れた「スティーブ・ジョブズスタイルのプレゼン」を披露。当時は、業界内を中心に、「やりすぎだ」「カッコつけすぎ」などと散々、揶揄されていた。

しかし、豊田社長の試みはじわじわと業界を動かし、2019年のモーターショーでは「章男スタイル」のパフォーマー型プレゼンターの数が、演台で読み上げるだけの「インフォーマー型」を初めて上回った。モーターショーのプレゼンはプレス向けの「説明」の場ではもはやなく、万人向け「エンターテインメント」の場であるべきだ、という方向性に変わってきている。

大きな変革期を迎える自動車業界にあって、まさに日本の屋台骨といえるトヨタを引っ張る豊田社長には、強烈な危機感がある。そのために、様々な改革を打ち出しているわけだが、既存のやり方を踏襲しないコミュニケーションの形を日々追求しているように見える。最も特徴的なのは...

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