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実践!プレスリリース道場

ユニークな研究が注目を集めた ポーラHDのプレスリリース

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを紹介する「リリース道場」。今回はポーラによる、ユニークな調査で多方面から注目を集めたリリースを紹介します。

「美白に強い」イメージを訴求

メーカーの中には社内に研究所を持ち、ユニークな研究を行っている企業もあります。今回はポーラ・オルビスホールディングス(以下、ポーラHD)の研究部門であるポーラ化成工業(以下、ポーラ化成)を例に、上手な研究リリースを学んでいきたいと思います。

今年3月にポーラHDが配信したのは、現代日本人のうち縄文人の遺伝子を持つ人は肌にシミができやすく、渡来系弥生人の遺伝子を持つ人はできにくいという興味深い研究成果です。ポーラ化成の本川智紀上級主任研究員によるもので、2011年に一度話題になった後もライフワークとして研究を続けてきました。ただ、この成果発表だけだと「面白い話だな」で終わってしまうので、いかにPRに結びつけていくかが広報担当者の腕の見せどころです。

ポーラHDのコーポレートコミュニケーション室、広報担当課長の小川洋之さんは、今年2月にあったポーラのホワイトショットという薬用美白美容液の発売に結び付けたいと考えました。この4年間で本川さんの研究も進んでいたため、リリースの内容も十分。さらに話題の面白さに手応えを感じたため、記者発表もすることに。一見、単なる研究成果リリースに見えて、化粧品の発売に合わせて「美白に強いポーラ」を印象づける狙いがあったのです。

「縄文人」のインパクト前面に

リリースの制作では、(1)研究員自身がリリースを書き、(2)科学的背景を有するポーラ化成の広報担当・吉沢賢一さんが専門的な文章を噛み砕き、(3)ポーラの小川さんがさらに文章を検討するという3段階の工程を踏んでいます。概して研究発表には専門用語が多く、メディアの記者には難解なもの。その対策として(1)と(3)をするのですが、研究所にも広報がいるところは、あまり聞きません。研究職の吉沢さんが間に入ることにより …

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