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実践!プレスリリース道場

大量の新製品情報をどう整理する?日清製粉グループ本社のリリースを分析

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを紹介する「リリース道場」。今回は日清製粉グループ本社による、多くの商品情報をまとめたリリースを紹介します。

85品目の情報を整理する

新商品の発売時は、言うまでもなくリリースを配信する最大のチャンスです。けれど大手食品メーカーでは、あまりに新商品が多すぎて、とてもすべての商品に手が回らないことがあります。また春夏秋冬の季節に合わせて一気に新商品やリニューアル商品を投入することが多く、多種多様な商品をひとつにまとめたリリースを配信する企業もあります。受け取るメディア側もバラバラにたくさんのリリースが届くより、煩雑にならないという利点があります。今回はそうした「多品種総合リリース」のつくり方を、日清製粉グループ本社を例に学びたいと思います。

同社では例年2月ごろと8月ごろの2回、総合リリースを配信しています。家庭用常温製品と冷凍食品があるため必然的に商品点数が多くなり、2015年春期は常温製品が新製品34品目、リニューアル品27品目の合計61品目。冷凍が新製品7品目、リニューアル品17品目の合計24品目と、トータルで85品目をリリースでPRしなければならないのだから大変です。

このような総合リリースで大切なのは、「いかに情報が分かりやすく整理されているか」です。常温のリリースを見ると、全13枚あるうちの1枚目は3つのカテゴリにクローズアップし、全体のダイジェストとしています。こんなふうに(Point1)全体像が見渡せるダイジェストを1枚目に付けることが不可欠なのです。もちろんここに載せるのは今期の目玉製品で、そうすることでメディアも「そうか、この3カテゴリがポイントなんだな」と把握できます。そして2枚目以降は、ダイジェストで挙げた「小麦粉」「青の洞窟」「マ・マー」の順に2〜3枚で各論を展開し、最後にそれ以外の製品を紹介するという、非常に分かりやすい構成となっています。欲を言えば、ダイジェストのところに、何ページに各論が載っているかも記載してあれば、記者はさらに情報をたぐり寄せやすくなるでしょう。

イチオシ商品を3点に絞る

総務本部広報部の堀野倫広さんは例年、社内のプレゼンルームで行われる試食会に参加します。開発や営業、マーケティング担当者が集まる試食会で情報を収集しながら、どの商品を今期のイチオシにするかを、担当者とともに決定し、リリースを作成していきます。この作業に1カ月から1カ月半をかけるそうです。2015年春期はちょうど「周年もの」が重なったため、「定番のブランドを改めて訴求していきたい」と、周年商品カテゴリ3つをイチオシにすることが決まりました。年によっては2商品になることもあるそうですが、やはり目玉は2〜3商品が読み手にも受け止めやすい点数でしょう。その際に重視するのは「新しい切り口がある商品かどうか」だといいます。

ここで3点にまで絞ったイチオシ商品ですが、(Point2)タイトルではさらに「ボトルに入った小麦粉『日清クッキングフラワー』」1点に絞ってクローズアップしています。広報担当者としては色々盛り込みたくなるところですが、ここに3点を盛り込んだら、下のダイジェストと変わらなくなってしまいます。そうせずに、潔く1点に絞り込むことで、情報の格付けが読み手にも明らかになります。

またこのダイジェストには、(Point3)メディアが取り上げたくなるフックが多数用意されています。具体的に言えば新商品やリニューアル商品の点数の多さ、アニバーサリーイヤーであること、前年比140%以上という好調な売れ行き、わずか4分で茹で上がる便利さなど、インパクトのある数字が多く織り込まれているということです。ダイジェストは記者の目に留まり、興味を抱かせることが役割です。

さて、数ある商品の中から最プッシュ商品に選んだのは …

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