
新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを紹介する「リリース道場」。今回は西友による、グループの事業を親会社から積極的に配信したリリースを紹介します。
子会社を前面に押し出す
この春、惣菜商品のカロリーをカットした分を、開発途上国に寄付するというユニークな取り組みのリリースが配信されました。実施したのは西友の子会社・若菜(埼玉・川越)で、配信や取材対応は西友が行いました。競争の激しい総合スーパーマーケットは広告に力を入れている分、優れたリリースを見かけることが少ないのですが、これはメディアも気になり、取り上げたくなるリリースといえそうです。
この取り組みは「カロリーオフセットプログラム」といい、NPO法人TABLE FOR TWO International(以下、TFT)が推進しています。従来、大学や病院の食堂、機内食などに導入されてきましたが、総合スーパーとして参画するのは西友が初めて。TFTの活動に賛同するのは女性が多いため、TFTとしては主婦客が多い総合スーパーは気軽に募金できる場となり、タッグを組みたい相手と考えていたようです。西友は、総菜ビジネスに力を入れており、カロリーや健康に配慮した商品の販売に積極的に取り組んでいたので、両者の思いが一致した形です。
特に若菜の中村真紀代表取締役社長は、「食で社会に貢献したい」という考えを持っており、今春の実現に至りました。「中村社長に記者発表に出席してもらいカロリーオフセットの取り組みをPRしました。元々西友・若菜を区別せず、ワンチームで取り組んでいますが、今回は若菜独自の企画として、その強い思いを実現するために、若菜を前面に出しました。」と企業コミュニケーション部広報室の遠山晴子さんは説明します。
親会社のネームバリューを活用
では、そのリリースを見てみましょう。まずは(Point1)レターヘッドやリードなどに親会社である西友の名称が大きく出されています。「若菜だけだと分からないこともあるので」と遠山さんが言うように、こういう場合、通りの良い親会社の名前は最大限活用すべきです。特に若菜の場合は社名に「西友」が入っていないので、必ず親会社の名前を入れましょう。もしこれが若菜単独のリリースだったら、残念ながら読み飛ばしてしまう記者もいるでしょう。配信元のネームバリューとは、それくらいモノを言うものなのです。
一方で(Point2)リリースの本文は、あくまで主語は若菜にして、若菜のリリースとして配信しています。そして文末で、親会社との関係などを明確に説明しています。こういう場合、2つの主語が入り乱れやすいので、主語と述語を整理することが必要です。
遠山さんは「一般のお客さまにとっては西友の店で買う惣菜であり、若菜でも西友でも、大きな違いはないかもしれませんが…」とも話していました。確かに若菜は西友の惣菜部門を担う子会社で、西友以外の企業とは取引がありません。であれば …