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知的財産を巡る紛争に、広報はどう対応すべきか

グリーvsDeNA訴訟に学ぶ、ゲームの著作権

TED知的財産法研究会

広報活動の中で常に隣り合わせとなる法律が「知的財産」にまつわるもの。はっと気付いた時、「時すでに遅し」とならないよう、日頃からしっかりとポイントを押さえておく必要がある。今回はゲームの画像について考える。

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争点となったグリーの「釣り★スタ」の画面(左)とDeNAの「釣りゲータウン2」の“魚の引き寄せ”画面(右)。双方ともに、これがゲームのメイン画面。

1.はじめに

別々の人によって作成された二つの画面が似通っている場合、その一方が他方の著作権を侵害しているか否かの判定はなかなか難しい問題です。たとえば、著作権法は、「創作的表現」を保護することを目的としていますので、侵害されたと主張する画面がありふれた表現に過ぎなければ、著作物性は否定され、著作権(翻案権)侵害は発生しません。また、その画面がアイデアの表現に過ぎず創作的表現に欠けていれば、その画面の著作物性は否定されますので、同様に著作権侵害が否定されます。しかし、この判別には多くの困難を伴い、しばしば訴訟に発展します。では、どのようなことが実際に問題になっているのでしょうか。実際に起きた事件を通じて、これについて概観することにしましょう。

2.実際に起きた事件

最近の事例といえば、携帯電話機用の「釣りゲーム」の著作権侵害をめぐって、業界の大手2社が争った「釣りゲータウン2事件」があげられます。

グリー社(原告)は、2007年5月に、携帯電話機用ゲームとして「釣り★スタ(原告作品)」の配信を開始しました。その後、2009年2月に、ディー・エヌ・エー(DeNA)社とゲーム制作会社であるORSO社(合わせて、被告)が「釣りゲータウン2(被告作品。2社の共同製作)」の配信を開始しました。原告からすると、被告作品の画面の画像や各画面の動きがきわめて原告作品に類似しているように見えるため、原告は、被告作品の配信の差し止めと9億4020万円の損害賠償を求めて訴えを提起しました。これが本件の経過です。

争点はいろいろありますが、その主なものは、次の2つです。

    1. 被告作品における「魚の引き寄せ画面」が原告作品の「魚の引き寄せ画面」に係る原告の著作権および著作者人格権を侵害しているか

    2. 被告作品における「主要画面の選択と配列」、「主要画面における素材の選択と配列」、「画面から画面への転換(変遷)過程でたどる経路の必然性」などが原告の著作権および著作者人格権を侵害しているか

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