
業界中堅や地方本社の企業の多くは、知名度の低さが新卒採用でも課題となる。しかし、ハンデを武器にトップ企業や首都圏の企業と異なる戦略・方法をとることで、学生の注目を集めることも可能だ。
全国メーカーとして勝負したい
「雪の宿」などで知られる新潟市の米菓メーカー・三幸製菓は、2006年から地元中心の採用活動をやめ、全国メーカーとして大都市圏中心の採用に転換した。今では、10~15人の採用者のほとんどが東京・大阪・名古屋などで採用した人材だ。
「それまでは、『どうせ新潟本社の企業。全国で採れるわけがない』という負け組の考えがしみついていた」と人事担当の杉浦二郎氏は話す。01年に中途入社し、06年から採用を任された杉浦氏は、企業の知名度・ブランドがないことが最大の課題だと痛感した。学生向けにアンケート調査を実施した結果、ライバルメーカーの知名度は8割近いのに対し、三幸製菓はわずか2割程度だったのだ。そこで、「イメージがないならば、採用活動を通じてつくっていこう」と考えた。しかし、当時は十分な予算がなかった。
予算獲得のため、杉浦氏は経営陣と今後どのような会社でありたいのかを話し合った。「あくまで"新潟の"会社なのか? それとも、全国に販売網を持つ企業として、全国メーカーでありたいのか?」と。答えは、「全国で勝負したい」。他メーカーとの知名度の差を数値で示し、「同じ予算で採用活動を成功させることはできない。他社は採用予算に加え、普段から商品の宣伝広報に投資し、社名を認知してもらう努力をしている」と訴えた。その結果、現在の採用予算は、当初予算の10倍程度に増えている。
予算を得て、杉浦氏はこれまで出稿できなかったリクナビのリッチコンテンツを拡充。東京や大阪で開催される合同説明会に2コマ分のブースで出展、採用面接などで使う会議室のグレードを上げ、採用ツールを改訂しポジショニングの確立を図った。
目指したのは、米菓メーカーの中でも成長力があり、熱い会社というイメージ。「三幸製菓って菓子メーカーだよね」ではなく、「三幸製菓って熱い会社だよね」と言ってもらいたかった。出展ブースの内装や入社案内は、企業ロゴに使われていて、情熱的なイメージのある赤色に統一。合同説明会と1社単体の企業説明会で、使う入社案内を別のものにした。1日で10社以上のブースを見る合同説明会では、一つひとつのツールをじっくり見ることはないため、巻物型にするなどインパクトで勝負。一方の説明会では、見た目と同時に中身の充実を重視し、『自分が会社を変えていく』という社員の強い意志を選挙ポスター風に仕上げた入社案内を用意した。


"熱い会社"のイメージを打ち出すため、キーカラーを赤に統一
三幸製菓は「菓子メーカー」と認識してもらうより「熱い会社」というイメージを持ってもらうため、赤をキーカラーに。合同説明会ではひと目で目立つよう巻物風、自社説明会では選挙ポスター風など、入社案内のクリエイティブにもこだわっている。