採用期間が短期化する中、同じ戦略、ツールを使っていては、知名度で勝る大手企業には太刀打ちできない。中小ベンチャー企業の採用担当者の悩みを解決する手法の一つとして、今年大きな話題になったのが"合同選考"という選択肢だ。
アイティメディア、オールアバウト、ガイアックス、マイネット、モバイルファクトリーの5社は、新卒採用研修のリソースを共有する"シェア型研修"を実施。この経験が後に、合同選考に結び付く。
短期化による学生の不便を解消
2013年1月、NHKや日経新聞がIT企業5社の合同選考を大きく報じた。アイスタイル、アイティメディア、カカクコム、デジタルガレージ、リッチメディアの5社が2014年度の新卒採用で協力。説明会と一次面接を合同で行うというものだ。
きっかけは、アイティメディアの人事担当部長である浦野平也氏が、12年秋に行われた合同企業説明会で、出展予定企業7社に「共同戦線を張りませんか?」と声をかけたことにある。交渉の結果、ITベンチャー5社が快諾した。提案したのは、どこか1社のブースで「◎」評価をもらえれば、合同で実施する説明会への参加資格が与えられるというもの。学生側は限られた時間の中で、5つのブースをまわらなくても5社分の選考機会を得る。その分、他社のブースを訪ねる時間もできる。また、企業側はそれぞれの集客力を掛け合わせることで、1社で集めるよりも多様な学生を集めることができる。
年末に行われた合同説明会では、担当者が互いに共催する企業の紹介を行い、年明け1月の一次面接は5社の採用担当者が並んで実施。それぞれが、選考に進めたい学生を選んだ。
浦野氏がこの企画を実施した大きな理由は、企業と学生のコミュニケーションを、本来あるべき姿に正したいという狙いがある。「企業と消費者のコミュニケーションは、この数年で様変わりしました。企業が上、消費者が下で一方的に上から下へ情報を流すのではなく、消費者同士が情報交換する場に企業がお邪魔して価値をつくる。そんな時代に、採用のコミュにケーションだけが変わらなくていいはずがありません」。企業の一方通行のメッセージの発信で、学生からの共感を得られるはずもない。むしろ、学生のいるコミュニティに企業が近づき、学生側が困っていることに応えていく姿勢が、学生の共感を呼ぶと考えた。
合同選考には、学生の不便や不満を解消する狙いがある。短い採用期間に、学生はあちこちで"同じような"質問を受け、それに答えなければならない。同じ選考を5回繰り返すことなく、1回で5社分受けたことになれば、学生にとっては貴重な時間とコストの節約になる。
5社合同選考の場には、NHKのカメラが入った。企業も学生も時間が足りない、というタイムリーなトピックスが背景にあったことで、メディアも注目する話題になったのだ。
学生と企業はフラットな関係に
1dayインターンシップをPRネタに
『るるぶ』編集部から、企業のオフィスを取材したいと声をかけてもらったことがPRネタ化のきっかけ。