人口減少と小売店舗の飽和によって、単なる小売店舗のままでは、売り上げの大きな伸長は見込めない。そこで、重要な要素のひとつがブランディングだ。ここでは、ブランディングに取り組んだ事例から、これからの実店舗のあり方について、横浜国立大学大学院の寺本高准教授が解説する。
売上伸長のためには「話題性」がカギに
スーパーマーケットをはじめとした小売業について、知人間で話が盛り上がったり、ソーシャルメディアで取り上げられる場面は非常に少ないのではなかろうか。多くの消費者は、それぞれお気に入りのスーパーがあっても、それを他人との話題にすることがない。つまり、「気に入ったお店はあるけど、別に他人に言うほどのものではない」という立ち位置が、スーパーのブランドとしての根本的な弱さなのである。
ブランドの評価尺度はいくつかあるが、なかでも対象ブランドを繰り返し購入したり、利用したりするブランド・ロイヤルティは、売り上げと密接な関係があるゆえに、多くの企業に重視されている。
小売業も同様で、自店で頻繁に購入する顧客を「優良顧客」と見なし、彼ら、彼女らを囲い込む施策に躍起になっている。しかし「優良顧客」を囲い込むだけでは、売り上げを維持することはできても、伸長するまでには至らない。
人口の減少と小売店舗数の飽和という状況下で売り上げを伸ばすためには、「話題性」がカギになってくる。「話題性」が高ければ、「ちょっとネタになっているこの店に行ってみようかな」と、新規顧客の来店が促され、その顧客がいずれ優良顧客になる可能性が高まるからである。
これからの実店舗には「強力な個性」を
「話題性」に優れたスーパーを2社挙げてみる。まずは関東を中心にスーパーマーケットを展開するオーケーである …