日常的な買い物が困難と言われる「買い物難民」問題は、人口減少社会において、より深刻な問題となっている。その問題に対して、いままでにない形の移動スーパー事業で解決を目指すのが「とくし丸」だ。
2日1台のペースで増加 地場スーパーの売上も支える
技術の進歩によって、実店舗などではコミュニケーションが多様化する一方、過疎地域だけではなく、都市部でも高齢者を中心に問題となっているのが「買い物難民」だ。近隣に食料や日用品を調達できる店舗がなく、日常の買い物が困難な状況に置かれている人々は全国に約825万2日1台のペースで増加地場スーパーの売上も支える人いると言われている。
その解決策として、2012年に立ち上がり、現在急激なスピードで増加しているのが、移動スーパー「とくし丸」だ。2020年1月現在では、46都道府県で計約480台が稼働しており、全国で約7万人の利用者がいる。「ビジネスモデルが確立し、全車平均日販額も約9万円と安定してきていることもあり、月10台〜20台のペースで急増しています。来年度には月に20台〜30台増を見込んでいます」と話すのは、運営会社とくし丸(徳島市)の執行役員 営業部 佐藤禎之部長。
「買い物難民問題はいまに始まったことではなく、誰も手をつけていなかっただけ。もともと問題は生じていましたし、マーケットもありました。だからこそ、新しい形の移動スーパーとして『とくし丸』が受け入れられ、台数も急伸しているのです」(佐藤氏)
「とくし丸」のビジネスモデルは、契約した地場のスーパーから商品を仕入れ、顧客の自宅前まで行き、スーパーの通常価格のプラス10円で商品を販売するというもの。そもそも、買い物に行くことが困難だった顧客が利用するため、プラス10円でも抵抗なく購入するという。
1台につき、販売のための移動ルートは3つ設定しており、それぞれ週に2回ずつ巡回する。1ルートは1日で周りきる必要があるため、ひとつのルートにつき、利用者は50人ほど。ルート設定の際に、購入意図があるか、事前に顧客にヒアリングしている。
契約するスーパー側にとっては、仕入れた商品を「とくし丸」を通じて販売できるため、商圏・顧客の拡大となり、売り上げアップも見込める。
人口減少の影響によって、地場のスーパーにとって、いままでの売り方では来店客数を増加させることはかなり難しい。しかし、人件費は高騰傾向。売り上げを伸ばしつつ、利益効率を高めなければならない …