IDEA AND CREATIVITY
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2020年を総括 ニュースを生み出したクリエイティブ

〈座談会〉ニュースを生んだコミュニケーションプランニング2020

島津裕介、多賀谷 昌徳、砥川直大、畑中翔太、花田 礼

かつてこれほど人々がニュースに注目したことはなかったかもしれない、とさえ思われる2020年。企業やメディアが発信する情報に人々は注目し、称賛し、時に批判の声をあげることもありました。そんな状況下で、時流を見極め適切な施策を仕掛けてきた5人のクリエイターに、2020年注目したクリエイティブとご自身の仕事を振り返ってもらいました。

2020年、印象に残った企画は?

多賀谷:ちょっと時間はさかのぼりますが、ロッテの「雪見だいふく」に“ひとくふう”加えてSNSに投稿するキャンペーン「雪見だいくふう」(01)。消費者からネタを募集して、ライバル企業に話を持っていくという。ネーミングもキャッチーで、話題になるときにはひとつの旗印、キーワードが必要だと思っていますが、それが商品名とかかっていて、わかりやすく乗っかりやすい仕組みだと思いました。

01 2019年末にロッテ 雪見だいふくが実施した「雪見だいくふう」キャンペーン。永谷園を含む4社が「新しい味」の開発に協力した。

島津:このアイデア自体は思いつくかもしれません。でも他の企業を巻き込んでアライアンスを組んでいく実行力はなかなか真似できない。さらにその取り組みがニュースになるところまでもっていったのは、どこまで計算して設計できていたのか、ぜひ担当の方に聞いてみたいです。実行力の部分で、自分ならここまでできなかったかもと思った素晴らしい事例です。

砥川:競合とも手を組んで、新たに売り場までつくれたのがすごいと思います。それに関連した話だと、僕が携わったサステナブルファッションブランド「ECOALF(エコアルフ)」(02)もアライアンスを組んで成功した事例。すべてのアイテムに再生素材や環境負荷の低い天然素材のみを採用している、環境問題に本気でコミットしているブランドです。その観点から「サステナブルファッションブランドの広告はどうあるべきか?」と議論になり、再生素材から服をつくるように、広告を廃材からつくろうと思いついたんです。

そこで、さまざまな企業の使用済みポスターから新しい広告をつくったらニュースになるのではと考え、吉野家さんやKDDIさんに声をかけて、不要なポスターをいただきました。そしてその上にECOALFの広告をシルクスクリーン印刷。アイデアというよりも、さまざまな企業を巻き込んでやり切れたのは面白かったと思います。

02 ECOALF「Upcycling the Ads #資源を無駄にしない広告」。協力企業のポスターの上から広告を印刷した。

花田:ECOALFの取り組みが好きで、砥川さんに質問です。広告を再利用するという意味では企業の許可のハードルは高いのかな、と思ったのですが、思想への共感があったからスムーズに進んだ感じですか?

砥川:そうですね、ECOALFの掲げる思想に共感してくれて、どの企業からも快諾いただきました。賛同企業もサステナブルやエコ、環境の観点で自分たちが一所懸命やっていることを伝えたいけれど、そういうのはなかなか伝わりにくいという実態も。ECOALFに賛同することで自分たちも「環境問題に取り組んでいる」と広められるなら面白いと賛同していただけたんだと思います。実際に、広告を掲出したら「吉野家かっこいい」などの声があがり、協力企業もほめられる形になったのは理想的です。

コロナ下で求められたスピード感

砥川:大塚製薬「ポカリスエット」のCM「ポカリNEO合唱」(03)はとにかく動き出しが早かったですね。ポカリスエットは中高生をずっと応援してきて、ブランドとしての変わらない姿勢があります。商品や企業の担当者が変わるごとにコミュニケーションも変わるブランドが多いなかで、思想や存在意義を世の中に蓄積してきました。継続させているからこそ、つくり手とブランドとの間に信頼関係ができていてスピーディーに打ち出せるんだなと思いました。自分たちのキャラ、ドメインがはっきりしていることがブランドの強みになっていて、コロナ下でも「すぐに動き出せる」というのが見えた事例だと思います。

03 大塚製薬 ポカリスエット「ポカリNEO合唱」篇。

畑中:僕もポカリスエットは2020年気になった広告のひとつです。この広告はまさに企業とクリエイターの信頼関係からスピード感が生まれてますよね。ブランドのキャラというものを両者が理解しあっていて、意思決定がストーンと早いから、すぐにこの企画が生まれて、実現したんだと思います。ただ企画を思いついたからできるというレベルではありませんね。

多賀谷:「早かった」という観点では僕はサントリーコミュニケーションズのWeb動画「話そう。」シリーズ(04)もそうだと思います。堺雅人さんや松岡修造さんら出演者が別々の場所からビデオ通話するもので、とにかく早いうえに、やることが的確だったな、と。これを見て初めてリモート飲みというものをしてみたくなりました。

04 サントリーコミュニケーションズのWeb動画「話そう。」シリーズ。

島津:劇団ノーミーツ(05)もスピード感がありました。このタイミングは僕も仕事が止まったりして、自分の仕事の存在意義について考えることがありました。僕らも仲間たちと、何かできるのではないかと企画していたのですが、ノーミーツはとびきり早かったですね。近しいことを考えている人はいたかもしれないけど、スピード感が素晴らしく、コンテンツの中身も短期間でつくられたと思えないほど面白い。制約があったからこそ生まれたこのアイデアに、痛快にやられたーと思いました。

05 劇団ノーミーツ 長編Zoom演劇「門外不出モラトリアム」。

多賀谷:ただ早ければいいというわけじゃなくて、トーン&マナーも含めて的確に届けられたものが記憶に残っていますね。コロナ下での生活者のマインドにどういうアプローチをしたか、というところが重要だったと思います。

「人格」をまとう企業が増えている?

砥川:ポカリスエットのように思想や存在意義を長年発信してきた企業は「企業の人格」が形成されていると思います。他にも、大日本除虫菊はこれまでも面白い広告をつくってきたなかで、コロナ下ではストレートに「もうどう広告していいかわからないので。」と表現しました。バーガーキングは、閉店したマクドナルド 秋葉原昭和通り店へ向けた広告で「私たちの勝チ」という隠しメッセージを入れた。

海外ではとがった広告コミュニケーションで知られるバーガーキングがそれをするからこそ、腹落ちしますよね。特定の商品やサービスよりも人格自体が定着することも重要で、仮にその時点では商品の売りに直接つながらなかったとしても、人格が定着することで「次につながる」可能性があります。商品のPRもですが、人格のPRも必要になっています。

畑中:最近は日本企業でもブランドの人格をちゃんとまとっているところが少しずつ生まれてきてますね。人格ができると、口が悪い人が悪いことを言っても「あいつはそういう奴だから」というのと同じで炎上しにくい気がします。

花田:これは2019年末の取り組みですが、バーガーキングの店頭広告(06)もやんちゃなキャラクターをまとった良い事例です。

古川裕也さんは「人の印象に残るアウトプットを確実につくるには、『異常値』を戦略的意識的に用意しておかなくてはならない」とおっしゃっていましたが、一般ユーザーの「バーガーキング下北沢店作ってくれや」というツイートをそのまま店頭に掲げたバーガーキング下北沢駅南口店の広告は「異常値」の出し方が鮮やかでした。広くコミュニケーションする店頭広告なのに1to1という点も意外性がありました。Twitterでもバズって、30万いいねぐらいついてリーチしたうえ、それをCMのように大きな広告費をかけずに実現したという意味ではレバレッジの効いた良い企画だと思います。

06 SNSの投稿をそのまま使った店頭広告、バーガーキング「バーガーキング下北沢店、作ってんで!」。

畑中:ACCでグランプリ(ブランデッド・コミュニケーション部門 Bカテゴリー、プロモーション/アクティベーション)を獲ったゼスプリ インターナショナル ジャパンも、4年ほどかけて「キウイブラザーズ」(07)をつくり上げてきましたよね。

特に2020年のコロナ下での生活者への寄り添い方が絶妙で、感謝を伝えたいスーパーや青果店の名前をSNSで募集し、推薦があったすべての店舗へ、キウイ1ケースを送る「#差し入れキウイ」企画など、きめ細やかさに気づくことも多々。多くの人に知られたキャラクターとその人格を活かし、テレビCM、新聞広告、SNS、店頭と多様な接点で展開する全方位的に完璧なコミュニケーションだと思いました。

07 ACCでも評価されたゼスプリ「キウイブラザーズ」。コロナ下の5月からはテレビCM「好きなことを楽しみながら」篇も開始。

その企業姿勢を示し続ける意志はあるか

畑中:博報堂ケトルでは、絶やすには惜しい地方のグルメに光をあてる「絶メシ」の取り組みから新たに派生して、コロナ下に「絶メシ食堂」(08)という飲食店を新橋につくったんです。

いろいろな人から「外出自粛で店がどんどん潰れて“絶メシ”になっちゃうよ」と言われたことがきっかけで。本来の絶メシはその地に行って食べるということがコンセプトなんですが、外出自粛で行けないのでどうしようと考えていたとき、フードベンチャーの方から「絶メシと何かやりたい」とお誘いをいただきました。そこで考えたのが、絶メシのレシピを店主から直接伝授していただき、シェフが食堂で再現・提供して、1皿ごとにその絶メシを提供してくれたお店に売上が還元される「応援型飲食店」の仕組み。

新橋で夜だけ営業していたお店に「昼帯営業を絶メシ食堂にしませんか?」とオープンしたところ、今では満席続きです。今後は配達やECなどの展開も考えています。

08 東京・新橋に7月オープンした「絶メシ食堂」。レシピを提供してくれた「絶メシ」店に売上の一部を還元する。

花田:面白いですね。僕が担当している727(セブンツーセブン)化粧品は美容室専売の化粧品メーカーなのですが、マスの広告に...

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