2020年8月、「大阪・関西万博」のロゴマークが決定した。不ぞろいの細胞が分裂している非対称のこのマーク。発表直後からSNSを中心に話題となり、二次創作などの現象を巻き起こした。1カ月の公募期間でどのようなプロセスを経て最終形にたどり着いたのか。受賞チームを代表して、シマダタモツさんが解説する。

絶対的にオリジナリティがある案を
2020年8月、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のロゴマークが発表された。選ばれたのは、大阪市浪速区稲荷を拠点に活動するデザイナー、コピーライターら6人からなる「TEAM INARI」によるロゴマークだ。発表後からネット上では二次創作が活発化。愛らしいキャラクターのような存在感があり、大阪・関西万博が掲げる「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマと連動しSNS上では「いのちの輝きくん」といった呼称も生まれた。
このロゴマークは1970年の大阪万博ロゴをDNAとして宿している。完成形には異なる大きさの5つの青い細胞の核があるが、70年万博のロゴを構成する5つの桜の花びらのモチーフが用いられていることがわかる。さらに不ぞろいに分裂した細胞によってできた中央の空白部分は、大阪府の地形とも重なる。
チームの代表者であるシマダタモツさん(SHIMADA DESIGN)は大阪府出身。5歳のころに体験した70年万博に愛着があり、仕事場の机に岡本太郎さんの「太陽の塔」のオブジェを置いていたほど。完成したロゴはカラーや見た目のインパクトを含め、地元出身の自身のルーツも反映されているという。
「当初は若手の挑戦の機会にという気持ちで始めたんです。とはいえ自分もデザイナーの端くれなので(笑)。地元で大きなイベントが開かれるんだから案を出してみようかなと。絶対的なオリジナリティのあるものをつくろうと、今回の万博のテーマである『いのちの輝き』を起点として細胞が分裂していくアイデアを出すところから始めました」。
70年万博ロゴのDNAを注ぎ込むまで
公募期間は1カ月。その間、細胞が形を変え、完成形に至るまでの11段階を見ていこう。まずは単純に、サークルでできるだけシンプルなものをつなぎあわせて「個」のつながりを表現できればと着想(01)。一度、サークルを分解してそれぞれに形を変えながら個性を加えていく(02)。さらに今回の万博のテーマ「いのち輝く」というキーワードをどう表現するかを考えるなかで...