テレワークが急速に浸透した2020年。一方で、制度や慣習によって、テレワークをしたくてもできない人がいる現状が浮かび上がってきた。そんな社会のひずみをサービスを通して解消したいと伝えたのが、乗車率が大幅に落ち込んだJRや東京メトロに掲出されたSmartHRの広告だ。
電車に乗って移動せざるをえない人の心に響く広告を
緊急事態宣言が発令され、新型コロナウイルスの感染拡大がニュースで騒がれていた2020年4月12日。SmartHRは「ハンコを押すために出社した。」というコピーの広告をJR山手線や東京メトロの車両内、新宿駅に掲出した。Twitterには多くの人が同広告を写真付きで投稿。ある一般ユーザーが発信したツイートには、4万3000以上の「いいね」が寄せられている。「今日の出社はまじでこれのため」「契約書類提出のために出社したなぁ……。全て電子化してほしい」など、コピーに賛同する声も多数寄せられ、大きな注目を集めた。
企画制作を担当したのは、SmartHRのコミュニケーションとクリエイティブのチームだ。
発案者で企画を進行したマーケティンググループ・ブランドマーケユニット チーフ 荒木彰さんは、「4月は新入社員も多く、書類提出がしばしば求められる時期です。そこで、企業の人事労務担当者や一般の社員の方たちにSmartHRを使うことで仕事が楽になることを訴求するOOHの掲出を考え、電車や駅の広告枠を押さえていました。しかし入稿の締め切りが近づくにつれて、ニュースや調査で感染拡大の様子が明らかになってきました。広告が出稿される4月12日のタイミングでは、そもそも外に人はあまりいないかもしれない。当初考えていたメッセージは見た人の心に響かない、と。そんなタイミングでも電車に乗って移動せざるをえない人たちへ向けたメッセージへの変更を決めました」と話す。
決断したのが3月6日で、入稿締め切りは18日。修正はわずか7営業日で行われた。コピーを目にした宮田昇始社長にも後押しされ、即日新たなクリエイティブの制作をスタート。100パターン近くものコピーとビジュアルを制作した上で選んだのが掲出された「ハンコを押すために出社した。」のコピーとビジュアルだったという。そのスピード感は、社内クリエイティブチームならではかもしれない。
BtoBtoEのコミュニケーション戦略
SmartHRはその後の2020年8月、新たにサービスビジョン「Employee First.」を掲げる。OOHは...