全日本DM大賞で5年連続、通算26冠を受賞した通販ECコンサルティングのダイレクトマーケティングゼロ(DM0)。その実績の背景にある独自のメソッドや仕事の進め方について、同社代表 田村雅樹さん、CCO 萩原良子さんに話を聞いた。
DM制作は、クライアントの「健康診断」から
──効果のあるDMをつくるために、どんなところから制作を開始しますか。
田村:弊社では、最初に必ずクライアントの"健康診断"を行います。具体的に言うと、「事業開始から何年目か」「初回購入のCPA(顧客獲得単価)はどの程度か」「アクティブユーザーの数は」「2回目購入への転換率はどのぐらいか」など、クライアントに詳細をヒアリングし、データを抽出します。
まるで企業の骨まで見るように、細かく質問をするので抵抗を示す方もいらっしゃいますが、メンバーは事業会社出身者が多いので「数値も気持ちもわかります」と、寄り添いながら進めるようにしています。その後は、今まで蓄積した約600社のデータと照らし合わせながら、クライアントに現状を説明するところから始めていきます。
──そこで見えてきた課題に対して、チームで取り組んでいくという流れですね。
田村:はい、"健康診断"をすると「手術、つまりはクリエイティブの力が必要だよね」という話になることがほとんどですから。弊社の場合、まずマーケターがDMのイメージや発送するタイミング、キャンペーンの内容、デジタルとの連動などの設計まで細かく計算してから、クリエイティブチームに引き継ぎます。全社員の半分強がマーケターですが、企画・編集・デザインを手がけるクリエイターが10名ほどいます。クリエイティブチームはそのデータを元に仮説を立てて、コピーやデザインをつくっています。
萩原:例えクリエイティブチームであっても、お客さまにとってはダイレクトマーケティングゼロの人間。DM制作においては、数字を把握することも大事ですし、逆に数字にまつわる質問をされる機会も多くあります。そのため、マーケターほど詳しくなくても、きちんと答えられる知識が求められます。
田村:社員のスキルアップのために、今年から週に1度、僕が講師となり勉強会を実施しています。その授業では通販の成り立ちや仕組み、数値の分析方法などを講義して、最後にはテストも行います。テストはみんなで問題を持ち寄ってつくるのですが、不合格の場合は追試もあります。でも、時々お楽しみ企画としてクイズ形式にし、優勝者にはハワイのペアチケットをプレゼントするなど、楽しい雰囲気で学べるようにしています。
DMだからこそできることをお客さまの想像を超えるレベルでつくる
──御社ならではの、DMのクリエイティブのメソッドとは?
萩原:当社独自の顧客説得クリエイティブ理論「AMIDAS」をベースに考えていきます。これはAttention(気づき)→Motivate(共感、未来像)→Interest(興味)→Desire(欲望喚起)→Action(行動・申込)→Share(共有)というプロセスで成り立つものです。ポイントはモチベーションにあり、ダイレクトマーケティングでよくある「そもそも、今買いたいという気持ちがない」という障壁を取り除くことができるのが特徴です。
これ以外にも、コピーを作る際には、メリットとリーズンとゴールを必ずセットにするなど、一定のルールがあります。とはいえ、これらはすべてに当てはまるわけではないので、案件ごとにアレンジして使っています。
田村:メソッドではなく気持ちの部分で言うと、僕は「DMだからこそできること」「DMにしかできないこと」をやりたいと思っています。例えば箱を開けたら何かが飛び出てきたり、紙の手触りを楽しめたり、ということはメールではできませんが、DMだからこそできることですよね。そういう紙メディアのよさやパーソナルな感覚を出していくことも大切にしています。
もう1つ、DMで人の心を動かすためには、お客さまの想像や期待を超えなければと思っているので、そこは常に意識してクリエイティブを考えるようにしています。
──御社は「第31回 全日本DM大賞」で5部門同時受賞をされました。特に力を入れたDMを挙げるとすれば?
田村:銀賞を受賞した弊社の「世界同時新年会を実現した世界にひとつだけの贈り物DM」ですね。弊社は普段DMを送っている通販事業者の方々に「受け手として心を揺さぶられる体験」をしてほしいと考えて、毎年、年賀状を制作しています。だんだんエスカレートして、去年から箱になっているので、もはや「年賀状」とは呼べなくなってきていますが⋯(笑)。
このDMは開封すると名前が印字された日本酒が隠れており、スマホを動画に重ねることでプロジェクションマッピングができるペーパーも同梱したりと、さまざまな工夫を凝らしました。「今年はどんな年賀状が来るか楽しみです」と言われ、プレッシャーを感じましたが、それこそ「お客さまの期待を超える!」という気持ちで制作しました。
──DM大賞に参加し続けたことで、御社はどんなものを得ることができましたか。
田村:DMの制作は、僕らの力だけでできるものではありません。例えば化粧品であれば、最初のトライアルDMを送った後、受け取った方の心理を推測しながら、次にどんなメッセージを送るか、クライアントと共にデータを見ながら考えていきます。そういうプロセスを経てつくっているので、DM大賞への応募はクライアントと一緒に制作したDMの集大成でもあり、クライアントとの信頼を築く場として大きいです。
通販の場合は特に、次から次へと施策を続けるので、自分たちが進めてきたことを振り返る機会がありません。年に1度、応募の際に自分たちのつくったものを振り返り、次につなげていくためのよい機会になっていますし、応募用紙を書くときに制作時のことを思い出したり、こんな成果が出たんだと数字を改めて確認してうれしくなったり⋯。
応募用紙も審査員の方たちに贈るDMのような気持ちで書いています。それだけに、たくさん賞をいただいたことは会社として誇りであり、社員のモチベーションアップにもつながっています。そして何よりも、新しいクライアントとの出会いの場にもなっています。そういうところに、弊社が全日本DM大賞に毎年応募し続ける意義があると考えています。
「第32回 全日本DM大賞」応募締切近づく
戦略性・クリエイティブ・実施効果などにおいて優れたダイレクトメール(DM)を顕彰する「第32回 全日本DM大賞2018」がDM作品を募集中だ。応募締切は10月31日。表現面だけではなく、ほかのメディアとうまく組み合わせて相乗効果をもたらしたDM、レスポンス獲得など実施効果を収めたものなども評価する。応募用紙や過去の作品集は公式サイト(http://www.dm-award.jp/)にてダウンロードできる。
特設募集サイトにて応募登録が必要です。 https://www.dm-award.jp/
お問い合わせ
03-3474-7668
全日本DM大賞事務局(宣伝会議内)