近年の技術の向上により、ニス表現、箔押しなど、これまではコストやひと手間かかった技術がオンデマンドプリントで表現できるようになった。表現技法や媒体の幅が広がる中で、その表現を目的に沿ってどこまで追い求めるかは、デザイナーにとって永遠の課題でもある。こうした課題を解決するべく開催されたのが、コニカミノルタ ジャパン主催のセミナー「商品・広告デザインにおける表現技法の可能性」である。当日は、ポルシェジャパン マーケティング部シニアアソシエイト 志水弘樹さんとアートディレクター 古平正義さんが登壇し、自身が関わるデザインについて話をした。
セミナー当日の様子。
技術×知識で変わる印刷表現
ポルシェは911という車種に代表されるように、一般的に"高性能なスポーツカー"という印象が強い。近年はラインナップの多様化にもかかわらず、従来のブランドイメージを払拭できないことに課題を感じていたという。そんな時に開催したのが、フルモデルチェンジしたパナメーラの発表会だ。ポルシェ初の4ドアセダンタイプで、より広い層に受け入れられる機能を持つ車であることから、同社では新しい形の内覧会を全国8カ所で開催した。そのキャッチフレーズは、「911が、嫉妬する。」。
嫉妬をイメージさせる薔薇の花をモチーフとした招待状、アートギャラリーなど車らしからぬ会場、さらにはARなどを使った先進的な体験、アート性の高いフードなど、特別感のある演出を行い、顧客にパナメーラというブランドを体験してもらった。その結果、目標の2倍以上の成約につながったと、志水弘樹さんは話した。
「デジタル、DM、空間、カタログなどを通して、どのようにブランドを体験してもらうか」。コミュニケーション全体の設計とデザインが、ブランドにとってますます重要になってきていることを実感させられる事例となった。
第二部で登壇した古平正義さんの仕事には、箔や特色、レーザーカッティングなど、加工が施されたポスターが多く見られる。「家の中を見渡してみれば、銀色に光るものはたくさんあり、特別なことではない。むしろ紫色を探す方が難しい。今の時代は色をたくさん使うより、白、黒、銀を使うほうが普通で、そのほうが生活や街中で馴染むのではないかと思っています」（古平さん）。
会場ではコニカミノルタのプリンタ「JETvarnish 3D」を使って出力した、古平さんデザインによる箔押しとニス加工したポスターを見ながら話を進めた。「最近はポスターの印刷枚数が100枚以下ということも増え、オンデマンドという選択肢は大きくなっています。そこに箔押しなどの加工がプラスされると、より活用の機会は増えそうです」（古平さん）。
オンデマンド印刷について、志水さんは「例えばサンキューレターのように一つひとつに特別感が必要なものに箔のような加工を施せるのは効果的で、コスト面からも活用しやすい。クライアント側も印刷見積もりの内容を理解すると、お金のかけ方が変わり、より効果的なものがつくれるようになるのではないでしょうか」と話した。
古平さんも「技術の進化で、通常の印刷でも、オンデマンド印刷でも以前に比べて実現できることが増えています。その一方で、デザイナーの勉強不足なのか、印刷を駆使した表現が減っています。印刷技術の知識を身に付けることで、表現をもっと広げることができると思います」と話している。
JETvernish 3Dで出力した古平さんのポスター。
会場には箔押し、ニス加工のさまざまなサンプルが並べられた。
JETvarnish 3Dシリーズ導入企業
島津印刷株式会社（新潟県）
▶http://www.shimazu-pnet.co.jp/
株式会社ユーメディア（宮城県）
▶http://www.u-media.jp/
株式会社ミヤギパッケージ（沖縄県）
▶http://mp1185.jp/
ポルシェジャパン マーケティング部 シニアアソシエイト
志水弘樹さん
アートディレクター
古平正義さん
※問い合わせ
コニカミノルタジャパン
IP事業推進部
ppg-ip-suishin@fusion.bj.konicaminolta.jp
