日本初の広告制作専門会社として、1951年に創業したライトパブリシティ。「Design and Designers」を標榜する同社が主催したセミナーで掲げたテーマは、「デザイン・シフト」。2つのパネルディスカッションを通して、経営戦略の大きな核となるブランディングとデザインについて探った。
商品の先にある時間やシーンを届ける
第一部では北欧デンマークの雑貨ストア「フライング タイガー コペンハーゲン(以下 フライングタイガー)」のマーケティング責任者である柘野英樹さん、そしてライトパブリシティ プロデューサー/クリエイティブディレクター 朝倉道宏さんが登壇した。
設立22年目となるフライングタイガーは、オリジナルのカラフルな生活雑貨が並ぶショップ。その商品開発のベースにあるのは、「人々の生活に楽しいシーンや時間をもたらす」もので、それを誰もが手にいれられる手ごろな価格で提供すること。「当社の店舗は必ず1周するつくりになっています。これは自分が買いたいもの以外の売り場を見ることで、お客さまに新しい発見や発想をもたらしたいという考えから。こうしたことがブランドの"らしさ"としてしっかりと根付いています」。
「日本では、どのような事業戦略を立てましたか」という朝倉さんの質問に、柘野さんは「日本では特別な時にしか商品が購入されておらず、生活の中にしっかりと入り込みきれていないことが課題。それを克服するために、お客さま一人ひとりの生活シーンにぴったりの商品を提案していくことを重視してアクションプランを考えています」と答えた。
自ら体験することで気づく"らしさ"
第二部に登壇したのは、DEAN & DELUCA(以下 ディーン&デルーカ)他、ウェルカムグループの全ブランドの戦略を統括する菅野幸子さん。そして、多くの企業のコーポレートメッセージを手がけるライトパブリシティ コピーライター/クリエイティブディレクター 国井美果さんだ。
日本での開店当初、DEAN & DELUCA JAPANのメンバーは(以降、DDJと略)ニューヨーク本店の世界観で商品とビジュアルを展開すればお店ができる、と考えていた。ところが、それは「ディーン&デルーカ風にしかならなかった」。その時、初めて自分たちの"らしさ"とは何か?と模索し、DDJメンバーは、創業者デルーカに会いにいった。
「デルーカに"日本には素敵な食がたくさんあるのに、なぜそれを売らないのか"と言われ、アメリカと同じものだけを売ることを考えていた私たちは衝撃を受けました」。彼から聞いた話をまとめ、日本のディーン&デルーカならではのフィロソフィーや行動指針をつくりあげた。導き出された言葉は「LIVING with FOOD」。それによって「みるたのしみ、つくるたのしみ、食するよろこびを提案できるブランド」という立ち位置が明確になった。
国井さんは「"らしさ"を社員のみなさんが自分ごととして理解することを私は"腹落ち"と呼んでいますが、ディーン&デルーカでは、それをどう腹落ちさせたのですか」と質問。その答えとして、菅野さんが挙げたのは「トータルエクスペリエンス」だ。
同ブランドでは、食材などに関する勉強会やコンテストを開催。スタッフ一人ひとりがそれらを体験することで自ら気づき、新たに商品を開発し、店頭で顧客に提案していくという流れがある。それを聞いた国井さんは、「自分自身が体験して、自らブランドのファンになることも腹落ちの重要なポイント」と話した。
本セミナーでは、自分たちの"らしさ"を認識した上で戦略を実践している両社の話を通して、ブランディングを考える上での数々のキーワードが導き出された。
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