スマートフォンアプリを中心にソフトウェア開発を手がけるフェンリル。同社のデザインスタジオ「フェンリルデザイン」ではモノづくりにまっすぐ向き合う、職人肌のデザイナーたちが日々「人の心に響くデザイン」を追求している。
クライアントの幅広いニーズに応える開発実績
フェンリルは、Webブラウザ「Sleipnir(スレイプニール)」の開発を機に創業したソフトウェア開発会社である。Sleipnirは、アドレスバーを取り払い、タブUIを取り入れるなど、ブラウザの利用体験を一変させる斬新なUIで話題となった。
さらなる展開としてスマートフォンアプリ開発をスタートさせた。現在では、大手クライアントと共に双方の知見を生かして行う「共同開発」を中心に、アプリ開発実績は500本以上にのぼる。一般ユーザー向けのものだけでなく、建設現場向けなど業務用アプリも手がけており、クライアントのニーズに合わせて幅広いジャンルに対応している。他にもオリジナルのデザインツールやグループワークツールなど、さまざまな自社プロダクトの開発を通じてUIデザインのノウハウを蓄積。
こうした豊富な実績をもとに、開発のすべてのプロセスを一気通貫で担えることが同社の強みだ。
それぞれの職種が個性を発揮し一つのプロダクトを作り上げる
デザインと技術の両面を重視する同社では、社内にデザイン専門スタジオ「フェンリルデザイン」を設けている。ロジカルなものからエモーショナルなものまで、デザイン面からもクオリティを追求し、ユーザー満足度の高いアプリを提供する。
例えば学習アプリのデザインにあたっては、ワークショップのファシリテーションをはじめ、インタビューやユーザーテストなどの定性調査を実施し、ユーザーの反応を現場で見ながら開発を進めた。「アプリ制作ではユーザーがそのアプリをどのように使うのか、リサーチした事実をもとに戦略策定をし、UXデザインのコンサルタントと共に設計を進めています」とデザイナーの荻野博章さんは話す。また、業務用のアプリ開発ではクライアントの現場の運用を調査し、徹底的なヒアリングを実施する。「クライアントと一丸になって、ユーザーにとって有益なアプリを作っています。最終的なアウトプットのイメージにギャップがないように、ヒアリングは欠かせません。そこで見えてきたニーズに合わせてこちらから細かな提案をし、共通のゴールを設定することを意識しています」と荻野さん。
社内でもプロジェクトに関わるスタッフはコンサルタント、プランナー、ディレクター、デザイナーと分かれるが、職種による隔たりはない。アプリ開発の初期段階からデザイナーとエンジニアが分野の垣根を超えてアイデアを頻繁に出し合う。一つのプロダクトを作り上げるというゴールに向かって、それぞれの強みや個性を生かして切磋琢磨し、開発に当たっているという。
デザインの本質を捉えユーザーに驚きと感動を提供していく
同社では社員一人ひとりが個性を発揮できるように、人材育成にも力を入れている。「それぞれスタッフの得意分野が異なるため、社内で積極的にコミュニケーションをとりながら知識を共有しています。また、必要であれば社内で講義を行ったり、外部セミナーへの補助を出したりと会社として社員が成長するためのサポートは惜しみません」と荻野さんは話す。
「一気通貫で開発を進めるため、デザイナーもデザインの専門知識だけではなく、ソフトウェア技術の知識も必要になります。さらにクライアントとの共同開発の場合は業種業態への理解も欠かせないので、常に好奇心を持って分野を問わず学んでいます」とデザイナーの長谷川裕之さん。また、UI/UXのプロ集団として、HCD(人間中心設計)専門家の資格認定の取得も会社として後押ししている。
ソフトウェア開発を通じて人々を驚かせ、喜ばせる。そのために同社では「ハピネス」という言葉を理念に掲げ、ユーザー体験を意識して日々開発に取り組んでいる。「今後はフェンリルとしての情報発信に力を入れ、ソフトウェア開発やデザイン関連の企業同士でコミュニケーションを図り、業界全体を盛り上げていきたい。デバイスのかたちにかかわらず、インターフェイスの本質を捉えたモノづくりをしていきたいと考えています」と荻野さんは語った。