仕事をする上で、悩みや課題はつきもの。それをどう解決し、自分の成長につなげていくか――。若手コピーライターたちに自身の経験を振り返ってもらい、現在の立場から語ってもらった。
仕事で壁にぶつかったとき。その解決法
小藥 僕は博報堂入社1年目にいちばん大きな壁にぶつかりました。当時の上司から「早くプロになれ、褒められる仕事をしろ」と言われていたのですが、その言葉の意味がよくわからなかったんです。課題の本質が理解できていないのに、わかったふりをして言葉遊びのような表層的にコピーを書くことがあり、コピーライターという仕事が薄っぺらく感じることもありました。なにがいいコピーか体がわかっていなかった。そこで、自分が心から「いい」と思える意味のあるコピーを書きたくて、題材を探しました。自分が大好きな古着だったら自信を持って言葉が書ける気がしたので古着屋のポスターを制作し、社内外のいろいろな人に見てもらいました。新人賞に応募するのはどれがいいと思うか聞いたのですが、見せる人によって選ぶものが違うんです。そのとき、コピーには正解がないことがよくわかりました。正解がないからこそ、説得力を持たせるためにも、まず最初のステップとして自分が本当にいいと思うものを書くことが大事だと気づくことができました。そのポスターはTCC新人賞を受賞することができたこともあり、勝手に感じていた最初の壁を、勝手に超えた瞬間だったと思います。
阿部 僕は、いいコピーが「書けない」という時期がありました。当然ながら自分の案は全く採用されず、上司からは怒られるよりも「大丈夫か」と心配されるくらい。2009年に人事局からクリエーティブ局に異動して2年目くらいの時期のことです。「3年で結果を出します」と言って異動したので、内心とても焦っていました。そんなとき、学生時代にやっていたアメリカンフットボールで経験した「成長の条件」を思い出したんです。それは、短期間に圧倒的な経験を積むことと、背伸びせざるを得ない状況に自分を追い込むという方法です。そこで、2010年に宣伝会議の「谷山クラス」に通ったのですが、そうしたら案の定「電通なのにたいしたことないね」と言われてしまった。すごく悔しかったし情けなかったからこそ、言葉にまつわるありとあらゆることを吸収しようと本気になれたんです。25年分のコピー年鑑を全部読み、その中から自分がいいと思ったものを書き写し、なぜそれがいいと思うかも考え続けました。その結果、「書けない」という壁を乗り越え、2012年に東進ハイスクールの仕事でTCC新人賞を受賞することができたんです。コピーが書けなくて苦しんで必死に名作コピーを「写経」したときのノートは、今でも持ち歩いています。かれこれ6年くらい。壁にぶつかっても、あのときだって乗り越えられたんだから今回だって大丈夫、と自分で自分を励ますツールにもなっています。
下東 僕は、広告の仕事で「書けない」という経験は今までないのですが、著書を執筆したとき「どうしたらいいかわからない」ということはありました。担当編集者がこれまで手がけてきたのがハイレベルなアカデミック系の本で、僕のレベルとあまりにも違ったんです …