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PRパーソンのキャリア確立法

ハワイで開店準備中。ベンチャーにこだわる広報のキャリア

井川沙紀(George's Corporation)

どんなPRパーソンも、初めは広報初心者。彼らがその仕事に目覚め、スキルを磨き、キャリアの転換点となったのはいつ、どんな場面だったのだろうか。3人の事例をもとに、キャリアの築き方を読む。

「企業のベンチャーというステージで、経営に貢献する広報として生きていきたい」と話す井川沙紀氏。現在は、トリドールがハワイに出店する新業態の飲食店事業立ち上げのため、日々打ち合わせを重ねている。

広報を軸に事業立ち上げに参加

さぬきうどん店「丸亀製麺」をはじめとする外食店を国内外に900店以上展開するトリドールは今年、ハワイに新業態の飲食店をオープンする予定だ。現地での事業立ち上げ兼広報担当を務めるのが井川沙紀氏。昨年9月に入社し、現在は100%子会社のGeorge's Corporationに出向、今年2月には住まいをハワイに移し、現地のPR会社ほか契約企業との打ち合わせを進めている。前職では米国のソフトプレッツェル専門店「アンティ・アンズ」の日本1号店上陸のPRを担うなど、事業開発×広報の領域で、仕事を続けている。

広報の仕事との出会いは、06年に入社したベンチャーインキュベーション会社での広報部門の立ち上げ。採用担当として入社したが、投資先の事業価値を高めることを目的に、自社の広報部門と同時に、常時4~6社、計10以上の投資先の新事業PRも担当した。当時は社内に誰も経験者がおらず、PR会社と契約して一から広報の基本を学んだ。「未経験の状態で、5社の事業会社と親会社の計6社の広報担当を任されました。いま思えば、いきなり業種も異なる6社の広報を経験したことは、一気にいろいろな経験を積むチャンスだったと感じています」。

基礎から学んだ広報の面白さに目覚めたのもこの時だ。惣菜のネット販売事業が立ち上げ直後に人気ニュース番組『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京)に取り上げられ、一気に売上が伸びた。また、別の歯科事業では、創業後すぐに医療系の新聞や雑誌に取り上げられ、それを営業資料として活用することで信頼感が高まり、当初から多くの契約を結ぶことができた。「ベンチャーという企業ステージならではの広報業務の意義を深く理解した時期でもありました。創業時から広報を意識することで、スタート時の事業成長を加速させることができる。そのことを、実践しながら身をもって体験しました」。創業前後、社員は忙しく家族サービスもままならない。そんな中、記事に出たことで家族が喜んだという社員の声を聞くことも嬉しかったという。

投資先の会社の広報として成果を出す中で、次は自分が会社をつくる側にまわり、広報として尽力してみたいという考えが強まった。そんな時に知ったのが、アメリカのソフトプレッツェルチェーンが日本に上陸するという話。2010年、社員1号としてアンティ・アンズを運営するプレッツェル・ジャパンに入社した。入社したのは、社長が本社側と契約のサインを終えた直後。そのため、井川氏の仕事は、物件開拓、メニュー開発、採用、広報、プロモーションなど、事業をスタートするすべてのプロセスに関わり、広報もゼロからつくり上げた経験は、大きな糧になったという。

「当時、『プレッツェル』という言葉は、ほとんど日本で馴染みのないものでした。知っているとすれば、ドイツの堅いパンのイメージ。アメリカのソフトプレッツェルという新しい概念、言葉が日本に定着したら、それは自分の成果になるなと思い入社しました」と話す井川氏。3年が経ち、店舗数は全国17店舗(退職時)、スタッフは社長と2人から500人(アルバイト含む)にまで成長し、コンビニやコーヒーショップ、レシピサイトなどでも「プレッツェル」という言葉を見かけるようになった。「言葉が浸透したことは、個人的にとても嬉しく感じています。入社した時は、これで自分を試したいと思っていましたから」。

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