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生成AIと広告・マーケティング

「デジタルクローン」を対象にした調査はリサーチビジネスをどう変えるのか?

藤森省吾氏(ビデオリサーチ)

テレビ視聴率の調査などを行うビデオリサーチ社は、P.A.I.(パーソナル人工知能)を開発するオルツ社と提携して、デジタルクローン技術を搭載したリサーチサービス「Asclone(アスクロン)」の提供を開始した。AI技術は今後のリサーチビジネスにどのような影響を与えるのか。同社・企画推進グループマネージャーの藤森省吾氏に考えを聞いた。

デジタルクローンの活用でリサーチは3.0から4.0に進化

ビデオリサーチでは2021年1月、パーソナル人工知能(P.A.I.)を開発するオルツとパートナーシップを締結。今年5月に、仮想の調査回答者のデジタルクローンを生成し、対話形式でインタビューを行い回答が取得できるアンケートシステム「Asclone」の提供を開始しました。

このアンケートシステムは、当社にとって「リサーチ4.0」のリサーチモデルの構築を目指して開発されたものです。「リサーチ4.0」は、あくまで社内で使用している用語ではありますが、当社ではこれまでのリサーチ手法の変遷を【図1】のように定義しています。リサーチ4.0の調査手法がこれまでの手法に取って代わるわけではなく、1.0から4.0までが積み重なっていき、使える手段が増えていくイメージです。

図1 リサーチの進化

たとえば、当社が提供する視聴率や「ACR/ex」といった標本調査は、今も変わらずに行っています。ただ近年、生活者が個人情報を含むパーソナルデータの提供に対して慎重になる傾向は強まっています。法整備の影響もありますが、時代の流れによって生まれた人々の意識の変化でもあると考えています。

※ ビデオリサーチ社が提供する生活者を「意識」と「利用・購入者」の両側面で捉える日本最大級のマーケティングデータサービス。

今回リリースするデジタルクローンを活用したアンケートシステムも、AIを使ったアイデアとして出てきたものというよりも、調査対象者のプライバシーを保護する、新たな技術の開発を目指すなかで生まれたものです。正直に言って、当社はリサーチ2.0、3.0の潮流が生まれた際、この領域のパイオニアにはなれなかったという後悔がありました。そこで次なるリサーチの在り方を模索し、2018年にGDPR(EU一般データ保護規則)が適用された頃からサービスの開発を検討してきました。

認識×感情で個人の思考を再現する「P.A.I.」

「Asclone」は、必要な時に、必要なペルソナを有するデジタルクローンを生成し、テキストによる対話形式のインタビューができるサービスです。対人のアンケートとは異なり時間や場所、質問量の制限もなく、デジタルクローンのペルソナは適宜変更することも可能です。

たとえばチャットAIに好きな夕飯のメニューを聞いても...

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