2020年から「AIに効果を予測させながらつくる」仕組みを提供してきたサイバーエージェント。2023年5月には独自開発の日本語LLMの公開で話題を呼んだが、背景には、これまでクリエイターたちが積み重ねてきた実績があったという。AI事業本部AIクリエイティブDiv統括を務める毛利真崇氏に話を聞いた。
Web広告に特化してきたことがAI研究開発の基盤に
当社では2016年に「AI Lab」を設立し、社内でAIを活用した研究を進めてきました。メンバーは現在60人。クリエイティブ領域だけでなく、計量経済学や自然言語処理など様々な分野の研究者が所属しています。デジタルマーケティング分野のサービス開発を行う「AI事業本部」では、「AI Lab」と連携しAIの研究開発と実用化に注力する中で、新規事業開発のほか、AI技術を掛け合わせたサービスを提供してきました。
効果の高い広告をつくるためには、大きく分けて「効果が高いことを認識するAI」と、「広告をつくるAI」の2つが必要です。
そこで私たちはまず、2020年5月、静止画と動画の広告配信効果を事前に予測するシステム『極予測AI』の提供を開始。その後、同システムを基盤として、広告テキストやLPを生成しその効果を事前に予測する『極予測TD』『極予測LP』などをリリースしました。逐次機能の追加、アップデートを進めてきましたが、昨年ごろからその精度も爆発的に向上しています。
当社は元々インターネット広告に特化した企業ですから、ダイレクトレスポンス広告を利用されているお客さまが中心。『極予測AI』は2020年のリリース時点で、8割を超えるお客さまに導入いただきました。その際も「効果が上がるなら」と、理解は得やすかったように思います。
ここでWeb広告の歴史を紐解くと、インターネットが普及した90年代後半は、バナー広告やメール広告など、枠の販売が主流でした(当社の設立は1998年3月。同年7月に新規事業として「クリック保証型広告」に参入しています)。
ここでビジネスに大きな変化をもたらしたのが、2002年に始まった検索連動型広告です。これまでは「北海道旅行」を調べた人にも、「京都旅行」の広告が出ていた。今でこそ当たり前ですが、広告の効果を高めるためには、ターゲティングとクリエイティブを掛け合わせることが重要になったのです。
そして2004年にFacebook、2006年にTwitterのサービスが開始され、インフィード広告が登場します。これによりコンテンツの消費スピードが劇的に早くなってしまった。広告の製作の現場が疲弊し、時間の経過と共にCPAが高騰する⋯という状況に陥ります。
たくさんのクリエイティブをつくり続ける必要性を感じた私たちは、10年ほど前から日本各地に数百人規模の拠点をつくりました。「毎週20本のバナーがほしい!」といった要望に応えるには、内製化する必要があったのです。当初はとにかく大量にクリエイティブを生成することが目的でしたが、2年前からは『極予測AI』のリリースをうけて「“効果の高い”広告をたくさんつくる」ことにコンセプトを定義。これらの製作と配信の実績がデータベースとして・・・