生成AI「ChatGPT」による広告業務の効率化とDXを図るため、「ChatGPTソリューション開発推進室」を発足させた博報堂DYグループ。業務効率化のその先、生成AIをいかに活用し、広告業界の未来予想図を描こうとしているのか。この取り組みをリードする博報堂DYホールディングスの安藤元博氏、博報堂テクノロジーズの福世誠氏に話を聞いた。
Open AIに学習されないグループ共通基盤を構築(福世氏)
博報堂テクノロジーズは今年5月11日、「ChatGPTソリューション開発推進室」を発足させました。これは博報堂DYグループ内で生成AI「ChatGPT」をはじめとするサービス群を活用し、グループ内の生産性向上に加え、マーケティングへの活用を中心とした社外へのソリューション提供が目的です。その具体的な活動内容は以下の3つです。
まず、プロンプトエンジニアリング300名体制を構築、グループ各社向けの相談窓口の設置と現場支援の実現です。博報堂テクノロジーズの開発エンジニア・プロデューサー300名に対して、実践的なプロンプトエンジニアリングのカリキュラムを提供するとともに、その教育プログラムを博報堂DYグループ全体に展開することで、グループ全体で1000名のプロンプトエンジニアリング体制を目指します。
次に、ChatGPT活用促進に向けたグループ共通基盤の構築です。得意先情報や個人情報、制作物等の機密情報がOpen AIに学習されることなく、かつグループ内での学習や実験が可能な共通基盤となる「HDYChatGPTプレイグラウンド」を、Azure OpenAI Serviceのセキュアな利用環境上に構築し、グループ共通リソースとして全社員が利用できるようにしました。
3つ目が、自社内ヘルプデスクでの実証実験とノウハウ蓄積です。独自データベースと掛け合せた精度の高いチャットボットを構築し、実用面の課題の収集と改善を繰り返すことで、より高度なソリューションを開発。また、ChatGPTを活用したオフィスワークの効率化・自動化の取り組みも併せて実施し、現場支援への活用ノウハウを蓄積します。
顧客と生活者のあらゆる接点でAIが実装されていく(安藤氏)
博報堂DYグループでは、大きく分けて「社内活用」と「社外への付加価値提供」の2点で生成AIを初めとしたAIの活用を進めています。
すでに「社内業務の効率化」に関しては、あらゆる業界と同様に当社でも取り組みが進められています。たとえばコールセンター的な業務や、散在する社内文書にどうアクセスするのか、といった課題に対する解決策としてのAIの有効性は多くの方が認識しているところだと思います。
今後は後者の「社外への付加価値提供」が重要になってくると思いますが、広告業界においては、大きく①広告メディアビジネス領域、②マーケティングプランニング領域、③クリエイティブ領域の3点における活用が見込まれると思います。
まず①に関しては、当グループでは広告効果最適化を通して事業成長に貢献する次世代型モデル「AaaS(Advertisement as a service)」を提供してきました。AaaSでは・・・