広告主が広告会社に対して行うオリエンテーション。その「最適解」はどこにあるのか?日々、提案と制作を繰り返す中で生まれる、クライアントとクリエイターの齟齬の数々。それらを解消するカギとは。広告主、広告会社に属する5名が座談会を実施し、本音で語り合った。
フレームワークのみでは不十分「オリエンシート」の功罪
三好:まず、今回この座談会を企画した経緯からお話しします。私は以前、「誰に、何を、どのように」というフレームワークに沿ったオリエンを行った際、上手くいかなかった経験があり、それ以来その原因を考えるようになりました。
その後、この課題を検討した「効果的なオリエンテーションに関する一考察」という題で「JAAチャレンジアワード」に応募。ファイナリストに選出いただいたことをきっかけに、私以外の方も「オリエン」というテーマに関心があるのかもしれない、と考えるようになりました。そこで、まずはクライアントとクリエイター、双方の意見を聞く場を設けようというのが、本座談会の主旨です。
皆さんに聞きたいのが、「オリエンシート」についてです。規定フォーマットにすべてが記載されたオリエンシートって、クリエイターの方からはどう見えていますか。
加藤:たとえ、たくさん情報が書いてあっても、規定フォーマットをもらうだけでは正直読み解きが難しいとは感じます。「つまり一番大事にしているポイントってどこ?」といった点は、ちゃんと対話をしてみないと分からないですから。私が今お仕事をさせていただいている資生堂さんも書式上はいわゆる既定のものですが、お話をいただくとポイントが明確な印象があります。社内で何かお話しされているんですか?
梶田:資生堂においてオリエンでは、フォーマットに記載する項目と、具体的に話す内容の2つが存在します。フォーマットだけでは、「ここはマストで!」という箇所が読み取れない可能性があり、その場合「これは守らなければならない規定」と「ここは自由度を持って考えていただきたい部分」といった判断ができなくなってしまうのでクリエイターの方のクリエイティブジャンプを潰してしまう恐れもあります。「こうしたい」という意思を明確に伝える方法を日々、試行錯誤しています。
岡村:広告会社の営業の立場からすると、オリエンというのは双方がやり取りを通じて「つくり上げていくもの」だと思います。そこで重要になるのが、日々、ブランドのトンマナや「小さな悩み」などを共有できているか。コミュニケーションを重ねることで、クリエイティブがブランドのパーソナリティからズレないように調整できると思います。ブランドへの理解度の深さも、「守るべき部分」と「自由度の高い部分」を判断する助けになると感じます。
クリエイターとクライアントは直接話すべきか否か
三好:我々は、クリエイターとのミーティングの機会はプレゼンやプレゼンに対するディスカッションが主です。それが時々、もどかしいと感じる時があります。それ以外でクリエイターさんに何かを伝える際は、営業の方が間に入ることになります。
尾上:クリエイターとしても定期的なコミュニケーションの機会はあるとありがたいですね。昔は「素晴らしい企画さえあればいい」と思っていましたが、関係性や信頼が土台にあって、その上で初めて「企画の良し悪し」が判断されると最近では思います。なので、ある程度コミュニケーションを図った上で出したものの方が、上手くいく感覚があります。そういう意味では、年1回のプレゼンの機会で信頼を得るより、日頃から関係値を築いていきたいです。
三好:確かにそうですね。ただ、ビジネスなので必ずしも良い時ばかりではありません。「山あり谷あり」だと思うのですが、それでも信頼関係を保ち続けるためには、どうしたらよいのでしょう。
岡村:三好さんが懸念するような状況はクライアントとクリエイターが直接やり取りをする時に発生しかねないリスクかもしれません。そういう時こそ、僕ら営業がバランスを取らなくてはと思います。直接やり取りをすると、どちらかにパワーバランスが偏ってしまうことも起こりかねず、それによってブランド自体の話から反れて「この人が...