顧客との直接的な接点が少ない食料品などを扱うメーカーにとって、顧客理解を深めるためのデータを収集するには、自社だけで完結しないデータプラットフォームの構想が必要とされる。サッポロビールのデータ活用における思いをマーケティング本部の福吉 敬氏に聞いた。
顧客データは「もらう」ではなく「借りる」もの
Cookieの利活用が制限されるなかで、企業内に改めて顧客データを蓄積していくことの重要性を認識し、取り組みを進めているマーケターも多い。しかしBtoBtoCの事業モデルを中心としたメーカーにとって、顧客データの取得・利活用においては課題も多いのではないだろうか。この課題にいち早く取り組み、新たな挑戦を続けてきたのがサッポロビール マーケティング本部の福吉敬氏だ。同氏はサッポロビールのデータ利活用の方針を次のように語る。
「私たちがデータを利活用する目的は、お客さまをターゲティングし、広告配信の効率を高めるためではありません。私たちの商品がどのような方に興味を持っていただいているのか、顧客の“解像度”を高めることが大きな目的です。その顧客理解を通じて、お客さまに、よりよい価値を提供していきたい。だからこそ、データはお客さまから“もらう”のではなく、“借りる”ものと考え、どのような価値を付加してお返しできるのかを常に考えています」。
福吉氏が言うところの“データを返す”とは、顧客が求めているコミュニケーションを実践することにある。そのためにここ数年、注力し続けてきたのが、自社で取得した「ゼロパーティデータ」と「外部データ」の統合的な活用だ。
「ヱビスブランドでは、ファンとの双方向コミュニケーションの実施を目指しファンコミュニティ『ヱビスビアタウン』を開設しました。このコミュニティは、上位概念であるYEBISUメンバーズへの会員登録により参加が可能になります。『ヱビスビアタウン』やその他のYEBISUメンバーズに連なるアセット内で取得したデータをもとに、お客さまとの最適なコミュケーション構築し、そのコミュニケーションを通してブランドとの距離を近くしていただく。遠回りのようでいてブランド愛を強めていただくことは売上につながりますし、ファンの方々とのコミュニケーションを通じて得られた顧客理解の知見は次のマーケティング施策にも生かすことができます」と福吉氏は話す。