キャリアアップナビでは、マーケティングやクリエイティブ職のキャリアアップについて、毎月テーマをピックアップして解説します。今回のテーマは転職市場の動向。2022年の振り返りと、2023年の見通しについて、マスメディアンの荒川が解説します。良い転職は、良質な情報を入手することから始まります。「こんなはずではなかったのに…」とならないための、転職情報をお届けします!
Q.2022年末現在、転職市場の状況は?
厚生労働省が発表する一般職業紹介状況によると、2022年8月の有効求人倍率(季節調整値)は1.32倍。2020年5月から2021年12月までは1.08倍~1.18倍だったところ、2022年1月以降は毎月1.2倍を上回っており、求人の増加と転職活動の活発化が読み取れます。
広告・マーケティング・クリエイティブ領域でも同様で、第二新卒向けから中堅・ベテランをターゲットにした即戦力採用まで、求人は豊富です。マスメディアンで取り扱っている求人数は、会社設立以来で最多を更新しました。
背景としては、2020年のコロナでの採用抑制の反動と、離職の増加があります。経済活動の再開に伴う業務量の増加により、慢性的な人手不足が顕在化したと同時に、働き方の改善に向けたワークシェアリングのための募集も増加しています。
Q.業種・職種で特徴はある?
広告業界では、大手広告会社を中心にDX支援、事業戦略の策定など、IT・デジタル、コンサルティング分野に事業領域が広がりました。内部人材のリスキリングと並行し、外部から当該領域の経験者を積極的に採用しています。
なかには採用に苦戦している企業も多く、ポテンシャルで評価し未経験者も採用の対象にしています。広告業界に未経験で転職したい方はこれまで以上にチャンスがあります。
とはいえ、求人数が圧倒的に多いのは、引き続き営業・プロデューサー職です。オンライン・オフラインを統合し、メディアや手法を横断したコミュニケーションが設計できる人材の需要が高まっています。事業会社では、引き続き経験者採用を中心として、マーケティング、EC・Web担当、広報、クリエイティブの順に多くの募集がありました。特に、中堅規模の企業でSNSプランナーなどWeb施策を内製化するための採用が活発になりました。効果的な施策が移り変わるなかで成果を出すには、造詣の深い現場担当者が必要だからです。
クリエイティブ職種では、広告の枠を超えた体験設計や企業と生活者のつながりをつくるクリエイターの募集が増加しています。
マーケティングからパブリック・リレーションズへ。クリエイターのスキルが求められる企業コミュニケーション活動の領域も広がっています。ESG投資といったキーワードに表れているように、あらゆるステークホルダーが企業の社会における役割に注目している現状があります。持続的な企業価値の向上を実現するためには、企業の存在意義、すなわちパーパスに則った経営を実現し、さらに事業などを通じパーパスやビジョンを社内外に伝えなければなりません。またクリエイティブ職種のなかで求人数の伸びが際立つのが映像制作のポジションです。特にYouTubeなどSNSに掲載するための動画制作は需要が高く、これまでテレビ番組やテレビCMの制作に携わってきた方々が、活躍の場を移しているという話もよく耳にします。
Q.いわゆる売り手市場で、転職活動はどのように進めるのが良い?
求人が豊富だからといって、手当たり次第に応募するのはおすすめできません。売り手市場だからこそ、本当に魅力を感じる、入社したいと思える求人だけに応募しましょう。とはいえ、求人が溢れる現在、求人票に目を通すだけでも大仕事です。マスメディアンでのキャリア相談でも、求人の選び方や転職活動における時間の使い方について、ご相談を受けることが多くなりました。
Q.求人の選び方にコツはあるの?
まだ転職軸が固まらない方は、一度、第三者と話す機会を持ちましょう。特におすすめなのがカジュアル面談です。カジュアル面談は、選考の前段階で、企業と転職希望者が対等な立場でお互いを知るために情報交換をする場のこと。選考要素はなく、公開されている情報からは知ることのできない、企業の特徴やカルチャーを把握できます。求人が溢れているからこそ差別化が難しいなか、スキルや希望のマッチングを率直かつフラットに確認できることに転職希望者も企業もメリットを感じているようです。転職軸が明確になっている方には、最終的に入社できる企業は一社であると意識するよう勧めます。
転職活動には時間も手間もかかります。在職中の方にはなおさらです。中長期的に目指すキャリアが実現できる企業を見極めましょう。
Q.働き方の選択肢は増えている?
リモートワーク、副業など、働き方の選択肢が多様になりました。業務内容や待遇に加え、転職先選びの基準として考えている方も多いのではないでしょうか。
希望条件のなかでも、年収の交渉は内定・条件提示時までできません。しかしその他の条件、特に働き方については、適切なタイミングですり合わせをする必要があります。例えば、内定後に在宅勤務を希望すると伝えたところ、企業の社内規定で在宅勤務が不可とわかった…というケースがありました。そのような場合、選考にかかった双方の労力と時間が無駄になってしまいます。
とはいえ、選考中に希望条件を伝えることに遠慮・躊躇してしまう方も多いでしょう。私たち転職エージェントから企業側の意向や状況も踏まえたアドバイスもできますので、ぜひご相談ください。
Q.今後の転職市場の見通しは?
2023年以降は、これまでに採用した人材の定着・育成が企業成長の肝になります。さらに、アメリカの大手テック企業の減益や大規模解雇が報じられており、景気後退は免れないという見方も強くあります。デジタル関連職種の需要は継続する見込みですが、悲観的な見方が強くなった場合、その他の職種の採用は抑制される可能性が高まります。ただし、どんな環境でも新しい企業、事業成長を続ける企業はチャンスとばかりに採用を続けます。即戦力を求める傾向は強まりますので、現職で実績を積み、再現性のあるスキルを身に付けることが重要です。
過去最高の求人数を更新し、1年を通しても1月2月は求人数がピークを迎え、転職の選択肢が広がっています。ただ、転職のゴールは、目指すキャリアの実現につながること。長期的な視点で後悔のない判断をしていただきたいと考えています。仕事・働き方への価値観が多様化しているなか、転職は、キャリア構築の選択肢の1つとして捉えるのがバランスのよい見方でしょう。
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